しっかりデジタルと使い分け。若者には新鮮な、「アナログレコード」の世界。

 21世紀には消滅してしまうかもしれないとささやかれていた「アナログレコード(以下、レコード)」市場が再燃の兆しを見せ、いまや世界的ブームとなっています。
ブームの中心は、ノスタルジックな思いでレコードを手に取るシニア世代かと思いきや、CDやデジカメで育った若き(35歳以下)デジタルネイティブ世代なのです。ブームをけん引している要因として次の3点が挙げられます。
一つは、レコードプレーヤーが身近になったこと。これまではマニアのための高価なモノといったイメージが強かったのが、ここ最近のレコード人気に比例して、初心者が気軽に聴くには充分な機能を備えたオールインワンタイプの機器(1万円前後)が続々と登場しています。
二つ目は、人気ミュージシャンの相次ぐレコード化です。「きゃりーぱみゅぱみゅ」「サザン」など、ミュージシャンの間でも自作をレコードでリリースするのがちょっとしたブームとなっているようです。また、2014年にレコード専門店(渋谷)をオープンした[HMV]は、昨年、2号店を新宿にオープン。さらに昨年、レコードが付いたコレクションブック「ジャズ・LPレコード・コレクション」が[デアゴスティーニ]から創刊されるなど、周辺の動きも活発です。
そして、三つ目が最も大きな要因といえるかもしれません。それは、“ユーザーの意識変化”ともいうべき消費スタイルの変わりようです。1杯ずつドリップで抽出する“サードウェーブカフェ”がいま人気になっているように。小型インスタントカメラ「チェキ」や「写ルンです」が再び密かな人気を集めているように。手間や不便を超えた“味わい”を感じたい層が確実に増えているという時代のテイスト。指先ひとつで何でもできるデジタルの時代だからこそ、面倒くささを愛おしむという価値観。だからといってアンチ・デジタルではなく、両方を使い分ける—-家ではレコードをプレーヤーで楽しんで、外ではスマホに取り込んだデータや配信サービスを利用して音楽を聴くという、アナログとデジタルの融合です。

国内で唯一レコード盤を生産する[東洋化成](横浜)では、連日フル稼働の状態が続いており、この3年でプレス枚数が倍以上になったといいます。関連各社にあっては、この状況はもはや“復活”ではなく、新規事業と捉え、新しいカルチャーとして発信していく絶好のチャンス。ちなみに、あのスティーブ・ジョブズ氏は、家に帰るとレコードを聴いていたとのことです。

※参考:

日本レコード協会         http://www.riaj.or.jp/
HMV              http://www.hmv.co.jp/
デアゴスティーニ・ジャパン    http://deagostini.jp/
東洋化成             http://www.toyokasei.co.jp/
日経МJ(2016年9月26日付/同11月9日付)