“あったらいいのに”が実現。なにかと便利な「街角個室」。

テレワークの普及が拡大している今どきのビジネスパーソンの味方として、最近、公共の場に相次いで出現しているのが、移動の合間や商談前後のすき間時間などに安心して仕事ができる空間、「街角個室」サービスです。各社、昨年から、本格稼働へ向けて実証実験を重ね、仕様やサービス内容など、具体的な詰めの段階に入っています。

先陣を切ったのは、[東京メトロ]と[富士ゼロックス]が共同で開発した、駅構内に設置する一人用ブース「サテライトオフィスサービス」。昨年6月から今年3月まで、4駅で実証実験を実施。高さ約2m、幅1.6m、奥行き1mの電話ボックスのような個室に、イス、テーブル、コンセントをはじめ、無料Wi-Fi、液晶モニターから膝掛け、鏡、文具まで備わっています。実験中の利用料は15分200円(税別)。今後は、駅構内だけではなく、オフィスビルにも設置予定。
[JR東日本]が導入を検討しているのは、ウェブ会議システムの[ブイキューブ]が開発した一人用オフィス「テレキューブ」。昨年11月から今年2月まで、新宿・東京・品川の駅構内に4台ずつ設置して実証実験が行われました。「ステーションブース」と名付けられた一人用は、高さ2.2m、幅×奥行き1.2m×1.2m。机とイス、24インチモニター、コンセント、USBポート、スピーカー、Wi-Fi、防犯カメラ、非常ボタンなどを装備。JR東日本では、2020年までに、コワーキング(共同のオープンオフィス)型の「ステーションデスク」と、複数人利用可能な個室「ステーションオフィス」を加えた、全3タイプを30カ所に設置する計画です。
さらに、この「テレキューブ」に食指を動かしたのが[三菱地所]。昨年11月から今年3月にかけて、大手町と丸の内のオフィスビル3棟のエントランスに設置して実証実験を試みました。
いずれの“個室”も、外からは見えない造りで、扉を閉めると外部のざわめきが微かに聞こえる程度の遮音性の高さ。利用方法は、基本的に、利用したい時間帯を事前にスマホ予約の上、ブース到着後、スマホで電子キーを開けるという仕組みです。

子育ての味方となる個室も登場しました。育児関連サービスの[トリム]が開発販売しているのは、授乳やおむつ替えなどに使えるベビーケアルーム「ママロ」(利用料は無料)。高さ2m、幅1.8m、奥行き90cmの木製ボックスで、中からカギがかかる完全個室タイプ。現在、市役所・公民館といった自治体施設や、大型ショッピングセンター、レジャー施設など、全国の公的空間、約70カ所に設置されています。

移動中の“ちょっとした時間”を有効に活用するための“ちょっとした空間”。それほど遠くない将来に、空港や銀行、コンビニなど、都会の至るところに「街角個室」が林立しているという光景も、あながち……。

参考:

東京地下鉄(東京メトロ)       https://www.tokyometro.jp/
富士ゼロックス           https://www.fujixerox.co.jp/
ブイキューブ            https://jp.vcube.com/
JR東日本              https://www.jreast.co.jp/
三菱地所              http://www.mec.co.jp/
トリム               https://www.trim-inc.com/
日経МJ(2019年2月18日付)