本格的な普及に向け、国も動き始めた「自動ブレーキ」。

 走行中に前方の障害物を検知すると、自動緊急ブレーキが作動して衝突を回避する「自動ブレーキ」システムが、高級車から軽自動車に至るまで目覚ましい勢いで普及しています。

 「自動ブレーキ」は、メーカーによって機能や価格に大きな違いがあります。それは、障害物を検知する方式が異なるからで、大別すると、“赤外線レーザー(レーザーレーダー)”“カメラ”“ミリ波レーダー”の3種類があります。

 現在、最も普及が進んでいるのが“赤外線レーザー”方式です。「スマートアシスト」(ダイハツ)、「レーダーブレーキサポート」(スズキ)、「シティブレーキアクティブシステム」(ホンダ)、「スマートシティブレーキサポート」(マツダ)など。障害物を検知する距離が短いのが若干の弱点ですが、最大のメリットは、約4~6万円と価格が安いこと。

 7~10万円クラスは“カメラ”方式で、代表的なのが[スバル]の「アイサイト」。6月に発売された新型車「レヴォーグ」は、フロントウインドー上部に搭載した2台のカメラ(カラー)で前方の車や歩行者・自転車を検知。前の車との速度差が時速50km以下であれば、ぶつかる前にブレーキがかかって衝突が避けられるという仕組みです。カメラという特性上、雨天や夜間での精度はやや落ちるものの、現在、全体的な性能と価格のバランスで圧倒的に優位に立っているシステムといえます。同方式では他に、「エマージェンシーブレーキ」(日産)があります。

 3つ目は、10万円以上と高価な“ミリ波レーダー”方式。各社の高級車に多く用いられており、かなり遠方の障害物を検知できて、悪天候にも比較的強く、逆光も苦にしないのが特徴。

 今後は、例えば、“ミリ波+カメラ”(三菱「アウトランダー」)や“ミリ波+カメラ+赤外線”(トヨタ「レクサスLS」、マツダ「アテンザ」)のような、より高精度で高価な併用システムが高級車においては主流となってくると思われます。

 EUでは、『すべての商用車の新車に自動ブレーキを装備する義務』が2015年から発生することが決定。アメリカでも商用車への義務化が検討されています。そして日本でも、国交省が「自動ブレーキ」などの性能評価制度『予防安全性能アセスメント』を4月からスタート。これまでメーカーごとにバラバラだった性能数値などを横並びにして、作動状況などの評価を今秋にも公表する予定です。

 国内外のメーカーにとって、いまや「自動ブレーキ」の開発は避けては通れない技術革新の重要なコンテンツとなっています。“衝突をどう軽減するか”ではなく、“衝突をさせない”ことを前提としたクルマづくりの時代に突入したようです。

※参考:
富士重工業    http://www.subaru.jp/
ダイハツ工業   http://www.daihatsu.co.jp/
スズキ       http://www.suzuki.co.jp/
日産自動車    http://www.nissan-global.com/
本田技研工業   http://www.honda.co.jp/
マツダ        http://www.mazda.com/
トヨタ自動車    http://www.toyota.co.jp/
国土交通省    https://www.mlit.go.jp/
朝日新聞(2014年6月18日付)