まず“病気”の自覚から。需要広がる「肥満症予防」市場。

 世界中で「肥満」が増えています。日本でもこの20年間で増え続け、20~60歳代の男性約30%、女性約20%が「肥満」で、予備軍を含めると2,000万人もの肥満症患者がいるとされています(厚生労働省調べ)。

 「肥満」というのは、脂肪組織が過剰に増えた状態のことで、「肥満症」とは、BMI(体格指数)が25以上、かつ治療を要する高血圧や脂質異常などを起こす可能性がある場合を指します。いずれにしてもポイントは“内蔵脂肪の量”にあります。

 これまで、単に太っているだけだからと軽視されがちで、“病気”としての認識が希薄だった「肥満」。特に日本人に多いポッコリおなかの“隠れ肥満”(内蔵脂肪型肥満)は様々な合併症を引き起こしやすく、要注意です。高血糖や高血圧、脂質異常は、日本人の死因上位である脳卒中(脳梗塞・脳出血)や心臓病(心筋梗塞・狭心症)、がんなどとの因果関係も指摘されています。3人に1人が「肥満」とされ社会問題となっている米国では、昨年、医師会が「肥満」を正式に“病気”と認定したのに続き、今年、「米国心臓病学会」も同様の声明を発表しました。

 「肥満症」の原因のほとんどは“食生活(食べ過ぎ)”と“運動不足”。そこで日本でも医療機関や企業が、「肥満症」になる前に予防・改善しようと様々な取り組みを始めています。

 医療法人が運営する「メディプレックス大宮」(埼玉)は、高脂血症、糖尿病、心臓病などの疾病予防のための運動療法施設です。まず、整形外科医のメディカルチェックを受けた後、目的に合わせて専門スタッフとトレーニングメニューを作成します。コースによっては、月一回、トレーニングの効果を医師が診断してくれます。料金は、メディカルコース月2,000円~プラチナコース月3万円までの5段階。

 フィットネスクラブの[ルネサンス]は、肥満症予防に“プチ断食”を取り入れた「ファスティングダイエット」を展開中。3日間、水と専用ドリンクだけで過ごすことで、内蔵を休め、消化から排出までを円滑にして減量する仕組み。週1回、計4回の講座とテキスト、専用ドリンクのセット料金は27,000円。

 [セントラルスポーツ]の「ダイエットプラスワン」は、週2回、4週にわたって食事カウンセリングと運動指導(筋力トレーニングと有酸素運動)を行います。1回60分で、月33,480円。主な目的は「肥満症」の原因である体脂肪の燃焼です。

 「肥満」は体の危険信号です。まずは、“肥満は病気”という意識付けが第一歩。食事の改善と適度な運動で生活習慣を見直せば、発症を防ぐことができるのです。そうすること以外に、「肥満症」“予病”の近道はありません。

※参考:
厚生労働省        http://www.mhlw.go.jp/
メディプレックス大宮   http://www.k-osa.com/
ルネサンス         http://www.s-re.jp/
セントラルスポーツ    http://www.central.co.jp/
一般社団法人「日本生活習慣病予防協会」 http://www.seikatsusyukanbyo.com/
日経産業新聞(2014年9月8日付/同9月9日付)