企業努力が心に響きます。安全・安心+おいしい、「アレルギー対応食品」。

 特定の食べ物を口にすることで多様な症状が現れる「食物アレルギー」は、年齢性別に関係なくかかり得る疾患です。発症は、0歳から乳幼児期がピーク。文科省の調査によると(2013年度)、小中高生の4.5%が罹患(りかん)しているとの結果があり、40人学級なら1クラスに1~2人が「食物アレルギー」を持っている計算となります。国は2001年から、鶏卵・乳製品・小麦の3大主要原因食品に、エビ・カニ・そば・落花生を加えた7品目を「特定原材料」に指定し、加工食品への表示を義務付けています。

 患者本人と保護者の負担を少しでも軽減しようと、食品メーカーや外食チェーンは対応に取り組んでいます。

 早くからアレルギーケアに着目し、食物アレルギー対応ブランド「みんなの食卓シリーズ」を展開する[日本ハム]は、2007年、酒田市(山形)に専用工場を設立。アレルゲン物質の混入を検出するため、自ら検査キットも開発しました。

 “家族みんなと同じメニューを子どもにも食べさせてあげたい”と願うアレルギーの子を持つ親たちの切実な声に応え、2年がかりで開発されたのが「キューピー エッグケア(卵不使用)」。卵のおいしさとマヨネーズのような食感とコクを,卵を使わずに実現しました。

 これまでレトルトが主流で、かつ乳幼児向けの味つけが多かったアレルギー対応のカレーやシチューを、通常のものと遜色ない味にしたのは[ハウス食品]の「特定原材料7品目不使用シリーズ」。アレルゲンシャットアウトの専用製造ラインを整備し、500回を超える試作の末、誕生しました。
 [エスビー食品]も昨春、「アレルゲンフリー(27品目不使用)」の業務向けカレー&シチューフレークを発売。特定原材料7品目に準じて表示が推奨されている、20品目の原材料についても不使用の商品です。

 一方で、ファミレスやファストフードなどの外食業界では、食物アレルギーに関する制度やガイドラインといったものはなく、自主的な取り組みに委ねられているというのが現状です。例えば[デニーズ]では、対応メニューの提供や専用の調理器具・容器の使用はもちろん、アレルゲン物質の混入を現場でチェック。配膳するのも専任のスタッフが行うという徹底ぶり。

 ネット通販や専門店といった限られた販路だけでなく、スーパーなどでも目にすることが増えてきた「アレルギー対応食品」ですが、食品メーカーにとっては、アレルゲン物質混入防止のための新たな設備投資や万全の体制づくりなど、クリアすべき要件も多く、当然、製造コストは上がり、価格への上乗せは避けられません。

 しかし、採算は厳しくとも、絶対になくてはならない商品が「アレルギー対応食品」です。患者目線のきめ細やかな努力が、顧客満足度を向上させ、保護者の心にも響き、ひいては企業のCSR(社会的責任)実現につながると思われます。

※参考:
文部科学省    http://www.mext.go.jp/
厚生労働省    http://www.mhlw.go.jp/
日本ハム      http://www.nipponham.co.jp/
キューピー     http://www.kewpie.co.jp/
ハウス食品    http://housefoods.jp/
エスビー食品   https://www.sbfoods.co.jp/
デニーズ      http://www.dennys.jp/
日経МJ(2016年2月12日付)