市場の期待を背負った「4Kテレビ」。早くも価格競争の様相に

成熟度を増した最新の薄型テレビ市場のトレンドは、大型化と高精細化です。テレビの画面が大きくなればなるほど、解像度(キメの細やかさ=画素)の高さが求められます。そのため、いわゆる一般的なフルハイビジョンテレビ(2K)の4倍の画素数を持つ「4Kテレビ」に人気が集まっているのです。ちょうどアナログ放送停波時に購入したテレビの買い替え需要の高まりと、50~55型クラスで10万円台まで下がってきた値ごろ感もあって、販売増に弾みがついています。とはいえ、4Kテレビが薄型テレビ市場全体に占める出荷台数の構成比は、まだ5割に届きません。4Kテレビの普及を推進する総務省の試算(2014年)によると、4Kテレビは2017年には457万台が出荷されるはずでした。しかし実際は、その3割ほどにとどまっているというのが現状です。

そうした背景の中、今年12月の4K実用放送(NHK)の開始を恰好の商機と捉え、メーカー、家電量販店とも、単価の高い4Kテレビの販売に一層力が入ります。

その一方で昨年、もう一つの“4K戦争”が勃発しました。「格安4Kテレビ」の台頭です。

先陣を切ったのは[ドン・キホーテ]。6月に50型・5万4800円(税別、以下同)の商品を発売するや、わずか1週間で初回生産分の3000台が完売。すぐに1400台を追加したものの、こちらも完売。11月には[ノジマ]が、55型・6万9800円と49型・5万3800円で追撃。数日で予約の受け付けを終了しました。同月、ディスカウントストアの[MrMax]からは、49型・4万8800円の商品を1500台限定で販売。初回分は2日間で完売し、追加した1800台も早々に完売。12月には[ゲオ]が、50型としては最安値(2017年12月時点)と話題となった4万9800円の商品を1700台限定で販売しました。いずれも、いくら機能をそぎ落としたとはいえ、市場価格の半値以下を実現した“企業努力”は、着実に消費者の支持を集めています。その傾向が市場全体に広がっていけば、大手メーカー製品の価格引き下げへの誘引力となると思われます。

4Kテレビを視聴するには、専用チューナーや対応アンテナの交換が必要となります。総務・経産の両省は、これを消費者に周知するため、呼びかけています。

ソフトである4K対応のコンテンツがまだ乏しい中での、ハード(4Kテレビ)の先行普及。総務省は、20年の東京五輪の中継の多くを4K・8K放送で行う計画です。周辺市場を含め、今後の4Kテレビの盛り上がりに注目です。

※参考:

総務省          http://www.soumu.go.jp/
経済産業省        http://www.meti.go.jp/
ドン・キホーテ      http://www.donki.com/
ノジマ          http://www.nojima.co.jp/
MrMax           https://www.mrmax.co.jp/
ゲオホールディングス   https://www.geonet.co.jp/
日経産業新聞(2017年11月29日付/同12月6日付)
日経MJ(2017年12月1日付/同12月27日付)