懐かしくも新しいおいしさ再発見。いま、「そうめん」がトレンドです。

 近ごろ、“日本の夏の風物詩”的に愛されてきた「そうめん」に新たなスポットライトが当たり、季節を超えた手軽でヘルシーな食材として一年中楽しまれるようになりました。

 外食として「そうめん」を食べる“そうめん専門レストラン”も出現して人気となっていますが、やはり「そうめん」を食べる機会が多いのは圧倒的に自宅。しかし、いつもカツオだしのつゆに薬味を入れて…では、飽きる、味気ない、物足りないとの声が。そこで生まれたのが“バラエティそうめんつゆ”の数々です。これまでは、ほとんどが定番つゆの和風味をベースにしたものでしたが、今年は、“そうめん=さっぱり”というイメージを覆すような、濃厚でこってり系が主流です。

 今春[キッコーマン]から発売されたのは、イタリアン風のつゆ「そうめんdeパスタえびトマトクリーム」と中華風の「そうめんdeラーメン さっぱり鶏だし塩」の2種。どちらも醤油系の味がしないという、これまでのものとはまったく別物のつゆの提案です。「そうめん」にかけるだけで、パスタのような、ラーメンのような味わいが楽しめます。

 [永谷園]も、これまでにない味のつゆ、「まんぷくそうめんつゆ」シリーズ3品を発売。同社初のめんつゆ単独商品です。ゴマ油とコチュジャンを効かせた「焼肉風しょうゆ」、ゴマ風味に豆板醤を加えた「まろやか担々」、カツオだしに肉のうま味を加えた「こく旨カレー」。それぞれ、ガッツリ食べられる具入りで、こってりした味わいのつゆです。

 [ヤマサ]は、「くるみつゆ(粗く砕いたくるみ付)」と「黒ごまつゆ(すりごま付)」。

 [ヤマキ]からは、サラダ感覚で「そうめん」が楽しめる2種類のつゆが発売。鹿児島県産の完熟栗かぼちゃを使用したポタージュ風「栗かぼちゃの冷製かけつゆ」と、青森県深浦町産のブランド人参を使用したドレッシング風「雪にんじんの冷製かけつゆ」です。

 つゆ以外では、今年7月に登場してその意外性で話題を集めた「カップヌードルライトそうめん」(日清食品)。カップ麺に初の「そうめん」、というだけでもインパクトがありましたが、温・冷、どちらでもOKという新感覚のコンセプトにも驚かされました。通常の“ホット調理”と、お湯を注いでから3分後に氷を入れるという“アイス調理”。熱湯ではのびにくく、氷を入れてもしっかりコシのある麺の開発に成功しました。

 従来の定番つゆの市場規模は横ばいで、今後、大きな伸びが見込みづらいという現状。だからこそ市場拡大のために、各メーカーは毎年、目新しいバラエティつゆの味を提案し続けなければいけないという“台所事情”があります。各社に共通する開発コンセプトは、意外にも単純明快で、“家庭で出しにくい味”に尽きるようです。

※参考:
キッコーマン    http://www.kikkoman.co.jp/
永谷園        http://www.nagatanien.co.jp/
ヤマサ醤油     http://www.yamasa.com/
ヤマキ        http://www.yamaki.co.jp/
日清食品      https://www.nissin.com/
日経産業新聞(2014年8月4日付)