ITが、スポーツ施設を変える、スポーツ観戦を変える。

スポーツ庁によると、2002年のサッカー日韓Wカップで使用された国内10カ所のサッカー競技場のうち、14年度に黒字だったのは、野球の本拠地も兼ねた「札幌ドーム」だけだったというショッキングな結果が出ています。

そんな、全国のスタジアムの“火の車”状態を打開しようと、“スポーツ観戦改革”ともいうべき仕組み作りが、官民挙げて急速に進んでいます。政府は昨年、スポーツの市場規模を2025年までに15兆円(12年の約2.7倍)に拡大する目標を掲げました。共通する使命は、観客目線に立ち、ICT(情報通信技術)の活用で集客を図って施設の経営を改善すること。当然ベースには、20年の東京五輪を見据えていることは言うまでもなく、関連企業にとっては大きなビジネス創出の場となるのは間違いありません。

[東北楽天ゴールデンイーグルス]の本拠地「コボパーク宮城」では、パナソニックと協力して観客のスマホを活用したサービスを導入。複数のカメラからの映像を手もとで見られたり、リプレー動画の視聴も可能に。さらに、スマホから売店にフード類を注文でき、出来上がると通知が来るので行列に並ぶ必要がありません。
昨年2月に行われた「冬季アジア札幌大会」で[NTT]が提供したサービスは、スマホ向けにVRやマルチアングル映像を利用した観戦支援動画の配信。特に、カメラをカーリングのストーンに装着した“ストーン目線”画像をVR動画にするなど、見たことのない映像体験が話題となりました。
[ソニー]は、主に“審判補助システム”に力を入れています。よく知られているのは、テニスでボールのライン・イン/アウトの微妙な判定時に用いられる“チャレンジシステム”です。時速200kmを超えようというテニスボールの軌道を複数のハイスピードカメラで撮影し、ミリ単位で瞬時に解析する技術です。また、体操の競技では、レーザーセンサーによる自動採点システムが導入されています。
[NEC]は、顔認証技術を使った入場サービスの仕組みを開発(約1秒で本人確認)。同社は他にも、会場内の混雑状況の把握のための“群衆行動解析技術”を世界で初めて開発。共に、各地で実証実験を重ねています。

先進技術を駆使した新たな映像サービスや観戦スタイルの提供。現場に足を運ばないと得られない感動と興奮を演出する未体験のコンテンツの数々—-ICTの活用を核としたイノベーションは、スポーツ観戦の常識をも変えようとしています。

※参考:

スポーツ庁            http://www.mext.go.jp/
東北楽天ゴールデンイーグルス   https://www.rakuteneagles.jp/
NTTデータ             https://inforium.nttdata.com/
ソニー              http://www.sony.jp/
NEC                http://jpn.nec.com/
朝日新聞(2017年9月26日付)