“家呑み”を豪華に。外食並みの美味しさを閉じ込めた「グルメ缶詰」ブーム。
缶詰人気が続いています。それも、高級素材を使い、手間とコストをかけたちょっと贅沢な「グルメ缶詰」と呼ばれる高級缶詰がブームとなっています。普通の缶詰とは一線を画す厚手のパッケージに包まれたルックスで、平均価格帯は400~600円。
それにしても、節約志向という近ごろの消費マインドと逆行するかのように、缶詰がどんどん高級になっているのは何故でしょう。ブームの背景には3つの要因が—。
その1つは、景気低迷が定着して自宅でお酒を楽しむ“家呑み”派の増加です。そのニーズをいち早くキャッチしてグルメ缶詰ブームの先駆けとなったのが、[国分]の「缶つま」シリーズ(税別450~600円)でした。「霧島 黒豚角煮」「北海道利尻産むしうに」「広島県産 かき燻製油漬け」など、現在100種類以上。タパス(小皿料理)感覚で、女子会メニューとしても好評です。
[明治屋]の「おいしい缶詰」シリーズ(税別400~550円)は、素材別に、牛・豚・鶏・魚介・貝の5種類に分かれており、全36品目で展開。
“家呑み”という言葉が普及するずっと以前から、晩酌用の缶詰「焼き鳥缶」で人気を博していた[ホテイ]も高級路線を強化。「牡蠣のアヒージョ」「帆立のバジルソース仕立て」(税別300~450円)などがヒットして売り上げを伸ばしています。
ツナ缶最大手の[はごろも]は、高級ブランド「セブンシーズ」シリーズ(税別320~550円)を昨年立ち上げました。新商品を拡充し、今期売り上げ2割増を目指します。
ブームの要因2つ目は、東日本大震災を機に、缶詰のメリットが見直されたことです。それまで下降線をたどっていた缶詰の生産量は2012年に反転。缶詰自体がメディアで注目されるようになり、非常食として美味しさの追求が再認識されました。
3つ目として、安価なワインが日常的に呑まれるようになってきたことも強力な追い風となりました。
発売当初は、高級スーパーなどでしか売れないだろうと思われていた「グルメ缶詰」。ところがフタを開けてみると、“プチ贅沢”の時流にも乗り、その美味しさ、お手軽さから、ビジネスマンや主婦など、多くのリピーターを獲得。最近では、家電量販店や雑貨店といった、食料品店ではない店舗に置かれるなど、販路はさらに広がっています。
参考:
日本缶詰びん詰レトルト食品協会 http://www.jca-can.or.jp/
国分グループ http://www.kokubu.co.jp/
明治屋 http://www.meidi-ya.co.jp/
ホテイフーズコーポレーション http://www.hoteifoods.co.jp/
はごろもフーズ http://www.hagoromofoods.co.jp/
日経産業新聞(2016年9月27日付)
日経MJ(2016年9月28日付)