大量廃棄時代に秘策あり。アパレル在庫の、新・再生法。

年に2回新作が登場し、それが半年でセール品になったり、アウトレットに回るというサイクルの速さが特徴のファッション業界。トレンドという、情け容赦のないジャッジのせいもあって、まさに“腐らない生もの”と称されるアパレル商材ですが、宿命とはいえ、昨年、国内に出回った衣料品(下着は除く)のうち、なんと半数以上が売れ残り在庫となり廃棄という末路を辿ることに(経産省)。生鮮食品でも流通在庫の廃棄率は10%程度ですから、いかにファッション業界の廃棄の規模が大きいかということがわかります。

そんな事情のもと、在庫の処分を巡って、売り手と買い手をつなぐ新たなビジネスが生まれています。その一つが、ブランド品の売れ残った新品在庫を買い取り、ブランド名がわからないようにタグを付け替えて、より安価で再販するという仕組み。打ち出したのは、アパレルのリセール(再販)関連企業、[FINE(ファイン)](名古屋)。同社の工場で、襟タグや洗濯用の品質表示タグなど、ブランドネームの入ったものをすべて外し、新たに同社のブランド「Rename(リネーム)」のタグを縫い付けていきます。2017年の立ち上げ以降、買い取り先は、大手アパレルメーカーから通販、総合スーパー、百貨店、セレクトショップなど拡大を続け、昨年の買い取り実績は130万点に上りました。

アパレルや百貨店から発生する在庫を、購入したいバイヤーにつなぐ仲介サイト「SMASELL(スマセル)」を開設しているのは、[ウィファブリック](大阪)。買い手は主にディスカウントストアやセレクトショップのバイヤー。同社が支持を集める理由は、売り手が出品の際、細かな販路指定を出すことができる点にあります。例えば、“〇〇百貨店での販売は禁止”とか“ここから2km以内での販売は禁止”という具合に。同社はこのシステムで「2018年 日経優秀製品・サービス賞」を受賞しています。

“過剰在庫”と“廃棄”。この大きな問題を解決するために、ブランドイメージを傷付けることなく再び商品として再生できるということは大きな魅力です。そこには、廃棄コストの削減、さらに消費者にとっては定価より安く手に入るなど、幾重にもメリットが付帯しています。
アパレルの2次流通市場のなかで盛り上がりを見せる、廃棄を減らすための新たな“在庫処分方法”。それは、私たちに、洋服の価値とは? ブランドの価値とは? を問いかけているようです。

参考:

経済産業省           http://www.meti.go.jp/
FINE             https://c-fine.jp/
ウィファブリック        https://www.wefabrik.jp/
日経МJ(2019年1月25日付)
日経産業新聞(2019年4月18日付)