「仮想現実」が本格化。商機の拡大は、まぎれもない“現実”です。

 VR=Virtual Reality:バーチャルリアリティー。日本語訳では「仮想現実」。コンピューターによってつくり出された高解像度の3D映像やCGなどのデジタルな仮想空間を、あたかも現実の世界であるかのように、自分がその場にいるかのように知覚させる技術で、「人工現実感」などと訳されることもあります。VR専用端末であるゴーグル型のヘッドセット(ヘッドマウントディスプレー=HMD)を装着することで、360度全方向、仮想空間の世界を体験できます。今年は、このHMDが米国、台湾、韓国、日本などから次々と発売。5万円クラスの普及機種が登場したこともあり、“VR元年”として市場が一段と活気づきました。

 “体験”と“没入”がキーワードでもあるVRは、まずゲームやアトラクションの分野で活用されましたが、最近はビジネスにも広く応用され始めています。

 [三菱地所ホーム](東京)は今年から、住宅展示場でVR営業を展開。来場者はHMDをかけ、モデルハウスの室内を体感します。1カ所の展示場に来場することで、全ての展示ホーム(18カ所)の室内空間をリアルなVR画像で見ることができるとあって好評です。

 『SUUMO新築マンション 首都圏版』(リクルートホールディングス/8月2日号)には、特別付録としてHMDの「スーモスコープ」が付いています。組み立ててスマホにセットすれば、16棟のマンションのVR内覧が体験できます。

 [楽天トラベル]では、各地の観光名所をVR体験できるイベントを東京で開催。さらに、映像制作と機器貸し出しをセットにした観光PRを自治体に売り込むプランを始めました。今後、美術館や博物館なども含んだ、家に居ながらにして旅ができるバーチャルツアーコンテンツは、VR市場の大きな目玉になると思われます。

 [メルセデス・ベンツ日本]は、蔦屋書店(東京)の店舗内に、車を一切置かないショールームをオープン。VRで車の外観や内装を確認してもらうシステムで、都心で広いショールームを保持することの難しさを逆手にとったアイデアです。

 他にも、建築、教育、医療、軍事、ヘルスケア、警備、倉庫、物流、ファッションなどといった分野でもVRは急速に広がりを見せています。

 世界のVR市場規模は2020年までに7兆7000億円、2025年には約9兆円まで急成長すると見込まれています。

※参考:
三菱地所ホーム     http://www.mitsubishi-home.com/
スーモ         http://suumo.jp/
楽天トラベル      http://travel.rakuten.co.jp/
メルセデス・ベンツ日本 http://www.mercedes-benz.jp/

北海道新聞(2016年5月30日付/同6月1日付)
日経МJ(2016年6月27日付/同7月8日付)
朝日新聞(2016年7月14日付)