「海外家電」人気の理由は、日本市場の徹底リサーチ。

 ダイソン(英)、デロンギ(伊)、フィリップス(オランダ)、ティファール(仏)、エレクトロラックス、ブルーエア(共にスウェーデン)、ミーレ、ケルヒャー(共にドイツ)、アイロボット(米)、等々。日本のお家芸だったはずの家電市場に乗り込んできた“黒船家電”は、比較的高額にもかかわらず、なぜ日本の消費者の心をつかみ、売り上げを伸ばし続けているのでしょう。

 “電気ケトル”で日本の電気ポット市場に風穴を開けた「ティファールブランド」(グループセブ ジャパン)。成功要因の一つは、欧米で売れ筋だった1.7Lの大型サイズではなく、日本人の生活にフィットした1.0L、0.8Lといった小型サイズの導入だったといわれています。

 2004年の発売以来、日本市場を席捲しているコードレススティック型掃除機「エルゴラピート」(エレクトロラックス・ジャパン)。昨春、本国から製品開発担当者が大挙して来日し、日本の消費者の自宅を訪ね、実地にマーケティングを行ったという徹底ぶり。

 [フィリップス]から2013年に発売され、革新的といわれた揚げ物調理器「ノンフライヤー」は、日本の消費者のニーズや志向を入念にリサーチして開発された“日本仕様”。日本人の65%が週2回揚げ物を食べる一方で、高い健康志向も持ち合わせている、と分析。海外では「エアフライヤー」という名称で販売されていたものを、“油で揚げない”点を強調するため、日本向けだけに「ノンフライヤー」と命名。この、通常ではあり得ないといわれる戦略が日本の消費者に受け入れられ、大ヒット商品となりました。

 さらに昨年登場した家庭用製麺機「ヌードルメーカー」も爆発的なヒットを記録。小麦粉、塩、水を入れるだけで本格的な生麺が約10分で作れるというもの。週1回以上、麺類を食べる人が90%以上もいる“麺大好き民族”の割には、家庭で手作りする人はわずか3%しかいないといった日本人の食生活を徹底調査。その結果、炊飯器やホームベーカリーと同等に普及するチャンスがあることを確信しました。まだどこのメーカーも取り組んでいない“ホワイトスペース”であったことも大きな強みとなりました。

 “性能はいいけど、機能が多過ぎて使い切れない”との声も多く聞かれる日本家電。オーバースペックが、ガラパゴス化を招いているともいえます。そんなスキを狙って、驚くほどきめ細やかな市場調査から導き出された日本攻略のシナリオを基に、満を持して上陸する“黒船家電”の面々。多機能ではなく高機能。シンプルだけどチープではない。これまでの日本家電にはない魅力を備えた海外メーカーの攻撃に、日本のメーカーはどのように立ち向かうのか、今後に注目です。

※参考:
グループセブ ジャパン          http://www.t-fal.co.jp/
エレクトロラックス・ジャパン       http://www.electrolux.co.jp/
フィリップス エレクトロニクス ジャパン http://www.philips.co.jp/
日経産業新聞(2014年10月22日付)