捨てられるはずの野菜に、新たな命を。育ってほしい、「野菜再生市場」

形や大きさが規格外という理由で出荷されなかったり、台風や洪水といった自然災害でやむなく廃棄せざるを得なくなった野菜は、膨大な量に上っています。いま、その廃棄野菜を活用したまったく新しい再生アプローチが、各方面で注目され始めています。

規格外の野菜と寒天をペースト状に圧縮して余分な水分を取り除き、乾燥させて厚さ0.1mmのシート状に成型した、「VEGHEET(ベジート)」という“野菜海苔(のり)”が話題となっています(開発・製造・販売/アイル<長崎県>)。開発に20年を費やし、昨秋、商品化に成功。原料は、野菜と寒天のみ。賞味期限は常温で2年と長く、災害時の備蓄食材としてのニーズも。いまのところ、「ニンジンシート」と「ダイコンシート」の2種類で、今年6月から[イトーヨーカドー]で本格販売がスタート(5枚入、税別350円)。海外でも反響を呼んでおり、フランスやイタリアの星付きレストランでの使用も始まっています。

捨てられる運命の野菜や果物から、世界に類を見ない「クレヨン」を開発したのは、青森県のベンチャー[mizuiro]。その名も、「おやさいクレヨン Vegetabo(ベジタボー)」(10本セット 税別2000円)。地元産の野菜をパウダー加工し、主成分のワックスにライスワックス(お米の油)を使用。すべて、“食品”が原料のため、子供が舐めても大丈夫。クレヨンのラベルには色の名前ではなく、“きゃべつ”“りんご”などと素材の名前が付けられていて、塗ってみると、ほのかに、その香りまで漂ってきます。2014年に発売して以来、ギフト需要などをつかみ、3年間で約10万セットを売り上げるヒット商品に。中国や韓国、欧州でも販売されています。

廃棄野菜を使って染めるプロジェクト「フードテキスタイル」を展開する繊維商社の[豊島](名古屋)が、昨年、農水省が推進する「農業女子プロジェクト」とコラボして誕生したのが「着る野菜Tシャツ」。今回は、ニンジン、トマト、ネギ、ナス、カボチャからの染料で染められた5種類のTシャツを、クラウドファンディングで販売されました(3900円からの支援)。

ここで紹介した事例で使われている野菜は、廃棄される野菜のほんの一部、微々たるものです。しかし、エコをベースにしたその小さな試みが、地元農家の新たな収入源となるほか、新たな産業を生み出すことによる雇用の創出、地域農産品のブランド力向上、地産地消の推進など、その貢献度は決して小さくありません。地域活性化の動きと連携しながら、さらなる大きなうねりへと発展しそうです。

※参考:

アイル(ベジート)        http://vegheet.com/
mizuiro          http://mizuiroinc.com/
豊島               https://www.toyoshima.co.jp/
農林水産省            http://www.maff.go.jp/
日経ビジネス(2018年1月8日号/同2月26日号)
日刊工業新聞(2018年8月16日付)