ほどよい大きさ、生活サイズの「小型スーパー」待望論

車を保有しない高齢者や単身世帯の増加。そこに、地元商店街の衰退や総合スーパーの撤退などの要素が加わって浮き彫りになったのは、“近くに生鮮食品や日用品を買う店がない”と嘆く“買い物難民”問題。便利なはずの都心部に“フードデザト(砂漠)”が発生したのです。
そんな状況の中、日常的な買い物の空白地帯を埋める狙いで10年ほど前から登場したのが「小型スーパー」でした。サイズ的にはコンビニの1.5~2倍程度で、コンビニ同様のサービス(ATM、公共料金支払いなど)に生鮮食料品などスーパーの品揃えがプラスされた業態。性格的には、“ミニスーパー”であり“ビッグコンビニ”といえます。出店のための土地取得がしやすく、運営コスト的にリスクが少なく、小回りの利く出店戦略が可能。基本的には徒歩や自転車で来店してくれる層がターゲットです。

東京の一大繁華街、渋谷。その駅周辺は、ほぼ2年間にわたってスーパーの不毛地帯でした。2015年に、駅そばにあった食品マーケットが閉店したからです。以降、近隣住民は一気に買い物難民となってしまいました。そこに2017年、“難民救済”のごとく出現したのが、「東急ストア フードステーション」という小型スーパーでした。半径500m内には、約3300世帯の住民が暮らしています。品揃えは、野菜、水産物、精肉、惣菜、パン、ワインなどのほか、場所柄、観光客用に食べ歩きできる“カップデリ”や“フルーツバー”も好評です。

小型スーパーの代表格が、イオングループが2005年から展開する「まいばすけっと」。“コンビニ風スーパー”“生鮮コンビニ”と呼ばれる売場構成で、コンビニが取りこぼしていた生鮮食品へのニーズに対応。価格はコンビニより低めのスーパー(イオン)プライス。
[マルエツ]は、コンビニを意識した都市型小型スーパー「マルエツプチ」を2009年から展開。さらに、同店のアップグレード版として、「リンコス」を運営。徹底した“鮮度とできたて”を売りに、スーパーの強みをアピールする戦略です。

新しいレイアウトで、スーパー目線のコンビニを打ち出すのは[セブン-イレブン]。これまで、入口のすぐ横にあったレジカウンターをフロア奧に移動。全長9.9mと、従来より3mほど延びました。冷凍食品スペースが2倍となるほか、女性やシニア層を意識して日用品の大容量タイプも充実。2021年までに、国内店舗の約半分(1万店以上)を“新レイアウト”店舗にしていく計画です。

スーパーとコンビニ、それぞれの弱点をそれぞれの強みで補いながら、狭い商圏の顧客獲得を巡って、双方のせめぎ合いはいっそう激化していきそうです。

参考:
東急ストア フードステーション渋谷キャスト店  http://www.tokyu-store.co.jp/
まいばすけっと(イオンリテール)     http://www.aeonretail.jp/
マルエツ                 https://www.maruetsu.co.jp/
セブン-イレブン・ジャパン         http://www.sej.co.jp/
日経産業新聞(2017年2月9日付)