少ない資金、食材ロス無縁、調理要らず……魅力が詰まった「缶詰バー」。

 「缶詰」をおつまみメニューに取り入れた、ユニークなバーが全国で増加中です。正確に言うと、「缶詰」以外に食べ物のメニューはないという、ちょっと変わった個性派バーです。

 代表的なのが、[クリーン・ブラザーズ](大阪)がフランチャイズ展開している「mr.kanso(ミスター・カンソ)」チェーンです。誕生は2002年ですが、本格的にFC展開に着手したのが2011年。神田に東京1号店をオープンして以来、現在、北海道から九州まで44店舗と順調に拡大中。

 天井まである棚にぎっしりと並んだ缶詰、その数、約300種類(店によって取扱い数は異なる)。食べたい缶詰を選び、カウンターへ。生ビール、焼酎、グラスワインなど(350円~)のお酒を注文して、一緒にキャッシュオン。鯨、うなぎの蒲焼き、あん肝、おでん、ふぐ、カレー、オリーブからトド、熊、アザラシ、鹿といった珍味まで。1缶200円から最高2,000円まで。なかでも、京都の老舗「吉田喜(よしだき)」と共同開発した「ミスター・カンソ」オリジナルの「だし巻き缶詰」(550円)は、京風だしを利かせたふっくらやわらかな卵焼きを缶詰にするという、サプライズ的魅力の人気商品。「たこ焼き」や「麻婆豆腐」(共に550円)などのオリジナル缶詰も好評です。

 月30件を超える加盟問い合わせがあるという人気の理由は、開業の手軽さにあるようです。大がかりな厨房設備が不要なため、通常の飲食店の開業資金(1,500~2,000万円)に比べ格段の低予算で開業が可能です。希望者は、本部への加盟・保証金80万円、設計・内装工事費として190万円(10坪程度を参考)、営業準備金30万円の計300万円が開店資金の目安です(店舗物件に関する費用は除く)。本部へのロイヤルティーは、月々5万円。この中には、国内外から400種を超える缶詰の仕入れを各店の売れ筋や要望に応じて行ったり、経営上のアドバイスをしたりといった“サポート料”も含まれているようです。

 缶詰は長期保存が利き、賞味期限にナーバスになる必要がなく、飲食業の難しさの一つでもある食材ロスとも無縁。温めるだけで、本格的な調理をしないため調理経験不問、当然、調理師免許も要りません。さらに、一人で切り盛りできるので、人件費がランニングコストを脅かすこともありません。

 徹底的なローコスト・ローリスク経営の形態が評判を呼び、チェーン・個人経営を問わず、同類の「缶詰バー」が全国に出現しています。
 ちなみに、当初は、団塊世代が退職金で開業といったパターンを想定していたところ、実際のFC加盟希望者は30代が圧倒的に多いとのことです。

※参考:
クリーン・ブラザーズ  http://www.cleanbrothers.net
朝日新聞(2014年9月29日付)