リスクがチャンスに。市民権を得て太り続ける「ぽっちゃり服」市場

最近、テレビや雑誌などでオシャレでカワイイぽっちゃり系タレントの存在感が高まり、“ぽちゃカワ”ブームが盛り上がっています。特にファッションの分野では、ぽっちゃりさんの逆襲が始まったといわれるほどの活況ぶり。

これまで、大きなサイズの婦人服売り場では、サイズ優先で、色もデザインも二の次。とりあえずカラダが入るものを選ぶしかありませんでした。明らかに大きなサイズを求める女性が多く存在し、需要があるにもかかわらず、商品が十分に供給されてこなかったという現実。大手アパレル各社は、この状況をわかっていつつも、ニッチな市場だからと放置。生産コストや在庫管理の非効率などを理由に、ほとんど“見て見ぬふり”状態を通してきましが、昨今の“ぽちゃカワ服”市場の盛り上がりに目が覚め、各社、本腰を入れ始めたようです。

ぽっちゃり服ブームの先駆けであるアパレル通販大手の[ニッセン]は、昨春、新たに、ぽっちゃり女子をターゲットに絞った通販モール「アリノマ」を開設しました。
[伊勢丹新宿店]の大きいサイズの売り場「クローバーショップ」(13号~19号)や「クローバープラスショップ」(21号~25号)での売り上げも順調。
[ワコール]は、2013年から「ぽちゃカワブラ」シリーズ(アンダーバスト85~100cm)を立ち上げて、この市場に本格参戦。

欧州のファッション業界では、痩せすぎたモデルと契約しない、あるいはファッションショーへの出演を禁止する法律ができるほど。
店頭のマネキンの世界にも“ぽちゃカワ”の波が押し寄せています。大手メーカーの[七彩(ななさい)]からは昨春、丸みを帯びたフォルムでリアルなぽっちゃりマネキンが登場しました。
2014年には、ぽちゃカワのカリスマ、渡辺直美さんプロデュースのぽっちゃり服ブランド「プニュズ」がデビューしています。

これらの市場に共通するのは、一度買うとそのまま顧客になるケースがほとんどだという点。取り扱っている店が少ないため、自然とリピーターとなって固定客につながるといいます。市場規模こそ小さいですが、一度つかめば大きいマーケットといえます。

とはいえ、ぽっちゃりさんたちが、ここにきて急激に増えたというわけではないはずです。人数が増えたから“ぽっちゃり市場”が拡大しているのではなく、ずっと眠っていた潜在需要が様々な方向から掘り起こされたということです。

細くなくてもいいじゃない、と思わせてくれる昨今のぽっちゃりさんブーム。これまで置いてきぼりにされていた分、市場的にはまだまだ伸びしろはあるようです。

※参考:

ニッセン         http://www.nissen.co.jp/
伊勢丹          http://isetan.mistore.jp/
ワコール         http://www.wacoal.jp/
七彩           http://www.nanasai.co.jp/
日経MJ(2017年8月11日付)
朝日新聞(2017年9月12日付)