「ロカボ」が外食にも浸透。新たな健康志向を刺激します。

これまでの常識をくつがえす革新的な食事法として、いま注目を集めているのが、“緩やかな”糖質制限食「ロカボ」です。Low Carbohydrate(ロー・カーボハイドレート)の略で、「低炭水化物、低糖質」のこと。糖質の多い白米やパン、麺類などの主食を減らして、肉や魚、野菜などのおかずを多く食べましょうという考え方で、「食・楽・健康協会」(2013年設立)の代表であり、北里研究所病院の山田悟医師によって名付けられました。

長年にわたり、減量といえば、脂質を筆頭にたんぱく質も糖質も摂らないことが一番という考えが世界的にもダイエッターの常識でした。ところが、米国の学会で、“低カロリー食”より“低糖質食”の方がダイエット効果が高いとする結果が2008年に発表されると、これまでの栄養学の見解が一変。低糖質食による血糖値上昇の抑制や血圧、血中脂質の改善も評価され、さらに2015年には、脂質を控えても動脈硬化症のリスクは減らないとの発表も。単なるダイエットのためではなく、健康管理の基本としてのロカボが急浮上してきました。

糖質の量を減らしさえすれば、脂質やたんぱく質はどんどん食べていいのが「ロカボ」です。こうした動きを背景に、食品メーカーやコンビニ、外食チェーンなどは、“糖質オフ・ゼロ”のロカボ商品を相次いで投入。“脂肪分オフ・ゼロ”や“カロリーオフ・ゼロ”の市場が苦戦する一方で、その効果の高さと続けやすさが“糖質オフ・ゼロ”市場を押し上げ、年々拡大しています。
いち早く(2012年~)低糖質商品を販売している[ローソン]では、人気の「ブランパン」シリーズやプリンなど豊富にラインアップ。[ファミリーマート]は、[ライザップ]と共同開発した、パン、デザート、カップ麺など9品目を販売。牛丼チェーンの[松屋]は、今年1月から、定食のごはんを湯豆腐に変更できるメニュー(50円高)で、糖質を94%カットしています(同店通常ライス比)。[すき家]から今春登場したのが、「ロカボ牛麺」と「ロカボ牛ビビン麺」の2種。[吉野家]は、血糖値の上昇を抑える「サラシアエキス入り牛丼の具」(通称、サラ牛)を通販限定で販売。[はなまるうどん]では、昨年、美肌効果があるとされるアスタキサンチン入り、糖質ゼロ麺の「サラダ麺」を売り出しました。世界で初めて、街ぐるみで“ロカボ活動”をしているのは神戸市の「ロカボ神戸プロジェクト」。ロカボなメニューを提供する参加店舗が拡大中です。

40代以上の日本人で、3~4人に1人は血糖異常者、つまり糖尿病かその予備軍といわれている中、日本中にロカボが広がることで、年間1500億円もの医療費が削減できると、山田医師は予測しています。

※参考:

一般社団法人 食・楽・健康協会    http://www.shokuraku.or.jp/
ローソン               http://www.lawson.co.jp/
ファミリーマート           http://www.family.co.jp/
松屋フーズ              https://www.matsuyafoods.co.jp/
ゼンショーホールディングス      http://www.zensho.co.jp/
吉野家                https://www.yoshinoya.com/
はなまる               https://www.hanamaruudon.com/
日経MJ(2017年3月6日付/同3月29日付/同3月31日付/同4月5日付)