初対面の“つかみ”は、「変わり種名刺」におまかせ!

 一説では、古代中国の後漢時代、訪問先で相手方が不在の時に“刺”と呼ばれる木や竹の板に自分の名前と身分を書いた札を刺して来訪を伝えたことが、「名刺」の起源といわれています。日本では江戸時代に広まり、今では世界で最も「名刺」を使う国となりました。
 さて、SNS全盛の現代。名刺の役割も徐々に薄れ、そのうちなくなるのでは?と思いきや、予想に反して最近、「名刺」が新たな役割を得て息を吹き返し始めました。名前と連絡先を伝えるための“ごあいさつ”ツールから、初対面での会話の糸口を生み出すコミュニケーションツールとしての役割へ。形状や素材、デザインにとらわれない、個性的で印象度の高い「変わり種名刺」が今、巷で評判になっています。

 その主流が、クッキーや煎餅などを素材とした“食べられる名刺”(タベルメ)。[シリアルマミー](東京)では、画像データがあれば、世界に一つのオリジナル「クッキー名刺」を製作してくれます。タテ5cm×ヨコ8cm、厚さ5mmで、1枚(216円)ずつの個包装。QRコードもプリントできます。データ加工代が500円。3年前に発売するや、有名外車ディーラーや大手アパレルブランドなどから注文が相次いでいるとか。
 [アイデア](愛知)では、凸凹した落花生の表面に、社名・氏名・電話番号を刻印できる技術を開発して製品化。片面2列に16文字、両面で32文字まで。100個入り1瓶単位で販売しています(5,800円)。
 「プラモデルパーツ風名刺」を開発したのは、“金型屋さん”の[共栄金型](千葉)。発端は、初対面の異業種の人に“カナガタって、なんですか?”とよく聞かれるので、それなら名刺を金型で作って、自社のアピールのツールにしようと生まれたもの。評判も良く、特に模型玩具にはまった世代の心をくすぐるには効果絶大のようです。1枚150円、金型代5万円。要望に応えて、名刺のパーツを組み立てると名刺立てになるという、遊び心たっぷりの発展形も登場しました。

 訪問先での名刺交換。誰にでも平等に与えられた最初のビジネスチャンスです。その機会を最大限に活用するための「変わり種名刺」。食べ物に文字や絵柄を印刷できるフードプリンターの普及と名刺のデータ管理が簡便になったことが、広がりに一役買っているようです。
 ちなみに、企業の名刺情報をクラウド上で一括管理するサービスで最近めきめき頭角を現している[Sansan(サンサン)]の一部社員の名刺は、「クッキー名刺」とのことです。

※参考:
シリアルマミー    http://www.sirimami.com/
アイデア        http://www.arigatou3.com/
共栄金型        http://www.mold-kyoei.com/
日経МJ(2016年1月8日付)