いま時代は“朝”がおいしい! 外食のゴールデンタイムも、夜型から朝型へ。

 どうやら、年々、日本人全体が“朝型”の生活スタイルにシフトしてきているようです。別の見方をするなら、“夜”の存在感が薄らいできたといえます。非正規雇用の拡大による深夜時間帯勤務者の増大、節約志向の高まりや交際費のカット。加えて、若者のアルコール離れは、かつて友人・同僚らと交流の時間だった“夜”に魅力をおぼえることなく、早く自宅に帰ってケータイやネットで情報収集や趣味を楽しむというライフスタイルを生み、さらに政府が奨励する、早朝出勤・残業削減の朝型勤務の導入が民間企業にも波及。なかでも利用者の減少と人件費コストの上昇などで苦戦を強いられている外食チェーンの夜間の売上高低下は顕著で、軒並み営業時間の見直しを迫られています。

 [マクドナルド]は24時間営業の店舗を削減して時間短縮へ。ファミレスの[ガスト]や[ジョナサン]も夜間の営業時間を繰り上げ、[ロイヤルホスト]は24時間営業店を大幅に削減。特に、夜の飲食の主役的存在だった居酒屋の落ち込みは激しく、2014年の売上高は6年連続のマイナスを更新(日本フードサービス協会)。そこで最近浮上してきたのが、朝~昼の時間帯の有効活用です。

 [コロワイド]が展開する居酒屋「北海道」では、昼間の需要を掘り起こそうと、午前11時~午後5時の宴会を“昼宴”と名付け、プチ会席でシニア層の獲得に乗り出しました。町内会や同窓会などでの利用が多く、平均客単価は3,700円程度。夜間の3分の2ほどですが、予約制のため食材ロスが防げる上に人員の手配も効率よくでき、メリットは大きいといいます。

 [きちり]が運営する「KICHIRI」では、幼児連れの母親たちを狙った“ママ会”のランチ宴会が人気です。個室のじゅうたん席、子供用メニューの充実、べビーカーが置ける広い入口、授乳室も完備されています。

 「はなの舞」などを展開する[チムニー]では、昼間に団体客を取り込もうと、東京と京都の大型店で修学旅行客の受け入れを始めています。

 一方、朝の時間を有効に活用しようという人たちの“朝活”ブームに乗って、ファミレス、カフェ、ファストフード、牛丼などの各チェーンをはじめ、近頃では、回転寿司店(おかずが回る)やラーメン店(朝ラーメン)なども参入、こぞって朝食メニューの拡充を図っています。狙うは、これまで朝食をとらなかった人たちの“胃袋”です。国の調査では、朝、食べない人は、男性で13%、女性で9%。一年でおよそ56億食、金額では約1兆7,000億円に相当すると推定されています。
 こんな、巨大で“旨み”のある潜在市場を前に、いつまでも、朝食はご飯かパンかなどと呑気なことを言っている場合ではなさそうです。外食業界に限らず小売業界にはいま、夜中心の固定概念を打破し、新たな時間軸でのサービスが求められています。

※参考:
総務省                   http://www.soumu.go.jp/
日本マクドナルド             http://www.mcdonalds.co.jp/
スカイラーク                http://www.skylark.co.jp/
ロイヤルホールディングス       http://www.royal-holdings.co.jp/
コロワイド                 http://www.colowide.co.jp/
きちり                    http://www.kichiri.co.jp/
チムニー                  http://www.chimney.co.jp/
厚生労働省                http://www.mhlw.go.jp/
日経産業新聞(2015年10月6日付)
日経МJ(2015年10月19日付/同10月28日付)