暮らしの、新しいインフラです。再配達ゼロを目指して、「宅配ボックス」

ネット通販の拡大に伴う取り扱い荷物の激増と、共働き世帯の増加などによる自宅不在率の高まりが招いた宅配便の再配達問題。この事態の解決策の一つとして、最近にわかに注目を浴びる形となっているのが、「宅配ボックス」です。

最近ではすでに、新築マンションに宅配ボックスは標準装備。業界内では“宅配ボックスを制する者がマンション業界の覇者にもなりえる”とまでささやかれているほどで、これまでエントランスの見栄え優先だったのが、宅配ボックスありきの設計に変わってきています。
その仕組みは、メーカーや種類によって多少の違いはありますが、主流となっているのは、配達員がボックスの画面や音声に従って荷物を入れ、配達済みの通知書を居住者(受取人)のポストに投函。居住者が荷物を受け取るには、個別の暗証番号でボックスを解錠する方式か、居住者の情報が登録されている操作キーやカードで解錠するタイプなどがあります。
[大京]は、今年度に竣工する自社マンションの各戸ごとに、郵便ポスト一体型の専用宅配ボックス「ライオンズマイボックス」を導入。
[三井不動産レジデンシャル]では、共用タイプの宅配ボックスを対象にITをフルに活用。特に、配送ドライバーのために、専用Webサイトから現在のボックス利用状況(混み具合い)が確認できるという、業界初のシステムを導入しています。

いま注目されているのは、普及が遅れている戸建て住宅向けの宅配ボックスです。その分野に力を入れているのが[パナソニック]。長年、宅配ボックスの販売が低迷していた同社は、認知度アップを目的に、日本で一番共働き世帯率が高いといわれる福井県あわら市の戸建て住宅100世帯に宅配ボックスを設置。昨年11月から今年3月まで、効果測定の実証実験を実施しました。その結果、49%もあった再配達率が8%と劇的に減少。その成果が報告されると今度は、同社に問い合わせが殺到。4月発売予定だった新製品の受注が当初予定の5倍以上にもなり、生産が追いつかなくなって発売を2カ月延期したほどの反響が。
[大和ハウス]は、ポストメーカーの[ナスタ]と[日本郵便]と組んで、戸建て向けの門柱一体型「クォール・ディーボックス」を開発。表札、インターホン、ポストと宅配ボックスが一体となったタイプです。

こうした動きに国も後押し。環境省は国交省と連携して設置費用の50%を補助する制度を新設し、17年度予算案に約5億円を計上。全ての宅配業者が利用可能なオープン型の宅配ボックスであることが条件で、初年度にはまず500カ所を目標に掲げています。

※参考:

環境省              https://www.env.go.jp/
国土交通省            https://www.mlit.go.jp/
大京               http://www.daikyo.co.jp/
三井不動産レジデンシャル     http://www.mitsuifudosan.co.jp/
パナソニック           http://sumai.panasonic.jp/
大和ハウス工業          http://www.daiwahouse.co.jp/
日本経済新聞(2017年3月6日付/同4月10日付)
日経産業新聞(2017年4月6日付/同6月1日付)
週刊朝日(2017年6月16日号)