ホテル宿泊客争奪戦。勝敗を分けるのは「コンセプトルーム」の魅力?

 都心部のホテルではいま、増え続ける訪日外国人を中心とした顧客の争奪戦が激しさを増しています。もはや、従来型の画一的なインテリアやサービスだけでは熾烈な競争を勝ち抜けないと、よりこだわりを持った、個性的でインパクトのある客室の投入に積極的です。
 なかでも、キャラクター文化との融合は、世界に類を見ない日本独自の創造的なおもてなし文化といえます。「ハローキティ」「アンパンマン」「ウルトラマン」「ワンピース」等々をテーマにした客室が全国に点在。最近では「くまモン」をはじめ、「Suicaのペンギン」や「ICOCAのイコちゃん」、チキンラーメンの「ひよこちゃん」といったゆるキャラ系の部屋も続々登場しています。

 「銀河鉄道999」をモチーフにしたコンセプトルームを展開するのは、[ホテルグランパシフィックLE DAIBA](東京)。天井を見上げれば満天の星空に浮かび上がる999号。鉄郎とメーテルが乗るBOXシートも再現され、汽笛が聞こえてきそうなリアル感にどっぷり!
 昨春開業の[ホテルグレイスリー新宿]では、生々しい“ゴジラ”に会うことができます。東宝映画「ゴジラ」の制作に携わったスタッフの全面協力を得て、皮膚、爪、口の中に至るまで完璧に再現。1日1室限定の「ゴジラルーム」は、ブラックライトを当てると写真やアートが浮かび上がるトリックウォールの演出や、巨大なゴジラの手が寝室の壁から突き出ているなど、ゴジラの世界が体感できる遊び心が満載。また、ホテルの8階テラス部分に張り付いた、高さ12mものゴジラの頭部が部屋をのぞいている「ゴジラビュールーム」(6室)が話題となりました。
 [パークホテル東京]では、「アーティストルーム」の展開を2012年から行っています。アーティスト自身がホテルに滞在し、そこで生まれるインスピレーションを基に部屋の壁に絵を描いたりオブジェを設置するなど、部屋自体が作品。現在、「相撲」「十二支」「妖怪」「銭湯」など18室が完成。今年中には、1フロアすべて(31室)が生まれ変わる予定。外国人利用者の割合が90%を超えるという人気ぶりには目を見張ります。

 部屋ごとにテーマを設けて作られた「コンセプトルーム」。成功の条件は、子供だまし的な幼稚なレベルではなく、大人が満足できるクオリティであることが必須。料金的には割高ながら、顧客争奪戦を戦い抜くための新たな付加価値戦略の“素材”として、思わぬ効力を発揮するかもしれません。

※参考:
ホテルグランパシフィックLE DAIBA  http://www.grandpacific.jp/
ホテルグレイスリー新宿         http://gracery.com/shinjuku/
パークホテル東京             http://www.parkhoteltokyo.com/
日経МJ(2015年12月25日付)