満足できなければ返金します。強気の販促、「満足保証」、続々登場。

 お買い上げの品に満足いただけなければ、購入金額をお返しします—–こういった「満足保証」と呼ばれるサービスが、最近広がりを見せています。元来は、ネットショップなど通販業界を中心に導入されていた販促手法でしたが、ここにきて一般の店やメーカーにも及んできました。

 昨春、[西友]が導入した「生鮮食品100%返金保証」が話題を集めました。肉や魚介類、野菜・果物など、2,000品目以上を対象に、全国374店舗で実施。鮮度や品質はもちろん、見た目が悪い、おいしくなかったなどといった主観的な不満でも、レシートをサービスカウンターへ持参すれば返金に応じてくれるというもの。食べてしまった後でもOKという、まさに無条件の返金サービスです。

 そこまでやって大丈夫? 悪用されないだろうか?と、不安視する声もありましたが、親会社である[ウォルマート](米)は、本国をはじめ、カナダや英国などで同様の取り組みを実施してすでに検証済み。返金要求の件数も予想を下回り、売り上げアップにつながっているとのこと。

 [ソニー]は、スマホ用ヘッドホンを対象に“音に満足できなければ、代金はお返しします”と「音質保証キャンペーン」を実施(2011年7~8月)。[P&G]は、ジレットのカミソリ「マッハシン3シリーズ」で「満足保証返金キャンペーン」を実施(2014年8月~2015年6月)。[グリコ]は、チョコレート菓子「ビッテ」を対象に、コーヒーに合わないと感じたら返金するキャンペーンを実施(2014年9~10月)。変わったところでは、プロ野球の[横浜DeNAベイスターズ]が2013年に「全額返金!?アツいぜ!チケット」という、負けたらチケット代を返金する企画を実施。また、外食産業では珍しい試みといわれた[ロッテリア]は、ハンバーガーで「おいしいと感じなかったら返金キャンペーン」を実施(2009年と2014年)。返金率は約0.2%と、想定よりかなり低い結果が出ています。

 「満足保証」の手法は、マーケティングでは“リスク・リバーサル”と呼ばれています。企業がこの手法を導入する理由は、顧客の購入に対するハードルを低くすることにあります。この商品は本当に満足のいくものか? 金額に見合った価値があるのか?といった消費者のためらいや躊躇を、購入してからでも返金(または返品)されますよと、心の壁を取り払ってあげるのが“リスク・リバーサル”の役割。買い手のリスクを、売り手が引き受けることです。

 これまでの“割引”や“サンプリング”といった古典的な販促手法が、もはや消費者には飽きられてきており、新規顧客取り込みの次なる“一手”といえます。

※参考:
西友      http://www.seiyu.co.jp/
ソニー     http://www.sony.jp/
P&G      http://jp.pg.com/
グリコ      http://www.glico.co.jp/
ロッテリア   http://www.lotteria.jp/
朝日新聞(2014年11月19日付)