高齢者=粗食は、今は昔。肉大好きな「肉食シニア」、増加中。

 高齢者といえば、油・塩分は控えて魚や野菜中心のあっさりした食事がカラダにいいといわれ、日本古来から続く“一汁一菜”の粗食こそ、健康で長生きの秘訣と相場が決まっていました。しかし時代は変わって21世紀の今。老人の粗食こそが、老化を速めてしまう要因といわれ始めています。
 噛む力や飲み込む力の衰え、食が細くなる一方の高齢者は、つい粗食志向に陥りがち。そんな食生活が、低栄養の“新型栄養失調”を招くケースが少なくありません。
 低栄養は老化を進めるだけでなく、認知症や脳卒中・心筋梗塞などの大きな要因といわれています。つまり、高齢者にとって怖いのは、肥満より低栄養といえます。
 そこで最近、健康長寿を実現するための食材として見直されているのが「肉」。長い間、健康に悪い、メタボや肥満予防のために控えなさい、と悪玉の筆頭のように言われ続けてきた「肉食」ですが、今や60歳からは肉もしっかり食べましょうと奨励されるまでに逆転。
 「肉」に含まれている良質なたんぱく質は、飽和脂肪酸が多く、エネルギーに転化されやすい特性があるため、骨と筋肉をつくるのに好都合。老化を遅らせるための、最も適した食材が「肉」というわけです。実際、100歳を超えて元気な人は、全員、高齢者の平均よりも「肉食」だったといいます。また、ある調査によると、60代の男性9割弱、女性8割弱が“肉料理好き”という結果が出ています。特に団塊の世代は、1980年代のグルメブームの主役であり、“食の楽しみ”を知っているベテラン揃い。量自体は減ってはきたものの、食材の質、栄養バランスなど、食へのこだわりが強く、「肉食」も抵抗感なく積極的に取り入れます。

 とんかつ、すき焼き、焼肉、しゃぶしゃぶ、ビーフシチュー……現役バリバリのころは健康を気遣って「肉食」を控えてきた人たちも、シニアになったら、逆にカラダのためにと胸を張って「肉」を食べることができるようになるとは—-。会社は退職しても社会はリタイアしない人たちの、新しい“肉食生活”に注目です。
参考:
日経МJ(2014年4月25日付)