現代ニッポンの象徴。進化をやめない、「自動販売機」市場。

 設置台数だけを見ると米国に次いで2位ながら、面積当たりの密度では世界トップの“自販機大国”ニッポン。2000年の560万台をピークに、その後は若干の減少傾向を見せながらも、2014年の台数は約504万台と健闘しています(「日本自動販売機工業会」)。

 自販機の歴史は、飲料メーカー各社による省エネ技術の進化の足跡でもあります。

その一つに、[日本コカ・コーラ]が2013年から展開する“ピークシフト式”があります。夏は7時から23時まで、冬は8時から22時までにわたって機内のすべての飲料の冷却運転を停止し、それ以外の時間帯(深夜~早朝)の電力を使って冷却するという高機能システムです。また[サントリー食品]では、昨年、消費電力量が国内最小といわれる「超省エネ自動販売機(エコアクティブ機)」の導入を始めました。

 自販機で扱う商品も、リンゴ、バナナ、おでん、ラーメン、うどん、パスタ、カレー、お米、ハンバーガー、納豆などの食料から、文庫本やCD、DVD、お守り、ぬいぐるみ、ヘアケア商品(ヘアクリップ、シャンプーなど)。果ては、純金(保証書付き)やガソリンスタンド形式で給水する温泉(10Lで10円)といった変わりダネも。また、最新機として話題になっているのがデジタルサイネージ(電子看板)付きの次世代自販機です。内蔵された認証センサーが、利用者の顔から性別・年代を瞬時に識別。時間帯や気温などを加味しておススメ商品をディスプレーに表示し、タッチして購入します。“自販機のコミュニケーションツール化”という、今後の方向性を示唆する顕著な例といえます。

 一方で、近年、自販機には社会貢献の面から“災害対応”という大きな使命が加わりました。多くの自販機には、災害発生時に無償で飲料水が提供できる“フリーベンド機能”が備わっています(停電時も作動可能)。

 [キリンビバレッジ]は、AED搭載自販機や乳がんの早期発見を啓発する運動を支援する「ピンクリボン自販機」を設置。売上金の一部が推進団体へ寄付されます。

 今や、スーパーやコンビニと肩を並べるほどの流通チャネルに成長した「自販機」ビジネス。今後は、ネットと連動させた多様なコンテンツやサービスを提供する“無人店舗マシン”として、日本のお家芸ぶりを発揮していくことでしょう。

 余談ですが、これまでは自販機の一等地は“左上”とされてきましたが、アイトラッキング技術によって、最も視線が集まるポイントは“左下”であることが判明しています(「ダイドードリンコ」調べ)。