直接お客様と接する場を。「メーカー直営店」の出店、相次ぐ。

 消費者への情報発信拠点として、また消費者の生の声を聞き取って商品開発に生かせるようにと、最近、分野を問わずメーカーが「直営店」の出店に積極的です。中でも代表的なのが[江崎グリコ]で、高級スティック菓子“バトンドール”(プリッツの高級版)を扱う同名の直営店『バトンドール』が、認知度、話題性、さらに“ここでしか買えない”という限定感のくすぐりを満たして堂々の王道を歩みます。「阪急うめだ本店」「高島屋大阪店」に次いで2015年春には、3号店「高島屋京都店」がオープン。また、2014年には、グリコ初となるキャラメル菓子専門の直営店『キャラメルキッチン』を新千歳空港内に出店。さらに2015年春、JR新大阪駅に、揚げたてスティック菓子の直営店『ぐりこ・やKitchen』をオープンしています。

 同社では、9割以上を占めるスーパーやコンビニといった販路の偏りを避けるため、百貨店ではデパ地下の高級スイーツとして、空港や駅では土産物として、新たな販路開拓の一環という位置付けで攻勢をかけています。百貨店サイドにとっても、希少性の高い商品を扱うショップの存在が、他店との差異化にもつながります。

 [カルビー]も複数の直営店を展開しています。
 北海道から沖縄まで全国9店を展開するのは、『カルビープラス』という揚げたてポテトチップスの店。地域ごとの個性的メニューが人気です。
 『グランカルビー』は、季節ごとのポテトクリスプ(高級なポテトチップス)の店で、「阪急うめだ本店」地下の直営店だけで販売。

 掃除機でお馴染みの[ダイソン]は2015年春、世界で初めてとなる直営店(『Dyson表参道』)を、英国ではなく日本に開設して話題となりました。“厳しい日本の消費者の声を、他の国に出店する際に生かしたい”というのが進出理由。

 ランドセルの[セイバン]は、初の直営店を東京と名古屋にオープン。スピーカーの[ボーズ]は、2015年秋、新たに2つの直営店『ボーズ・セレクトショップ』を大阪と東京にオープンしました。

 「直営店」の特徴は、通常の販路で扱う商品とぶつからないような限定品が中心の品揃えが魅力。その希少性が購買意欲を刺激し、デパ地下の某直営店では、商品を購入するための整理券を手に入れようと、配布時間前から長蛇の列ができるほどの盛況ぶり。

 PB商品に対抗するという面もあるメーカーの「直営店」戦略。いまや外資系企業に加え、元来消費者と直接つながりのない素材メーカーなども、自社製品を使用した商品を宣伝するために直営店を出店するなど、動きは多彩に。

 メーカーが、その距離を縮め接点を増やすために消費者に近づく、“ニア・マーケティング”の成果が注目されます。

※参考:
江崎グリコ     http://www.glico.co.jp/
カルビー       http://www.calbee.co.jp/
ダイソン       http://www.dyson.co.jp/
セイバン       https://www.seiban.co.jp/
ボーズ        http://www.bose.co.jp/
日経МJ(2015年9月18日付)