音楽市場の新たな収益源に。期待高まる、「ハイレゾ」。

 レコードからCD、さらにはMP3へと変遷してきた音楽の複製文化の歴史は、“圧縮”の歴史だともいえます。

 スタジオで収録された原音(マスター)はデータ量が多過ぎて、そのままではCDに収録することができません。そこで生まれたのが、音源データを圧縮して収録するという革新的技術でした。しかしそれは同時に、小さな音や繊細な高音域の音までカットしてしまうことになりました。

 圧縮音源のアンチテーゼとして生まれたのが「ハイレゾ音源」です。High(高い)Resolution(解像度)な音源データのことです。どのくらい高解像度かというと、CDの3倍から6.5倍もの情報量が記録可能に。限りなく原音に近い音質で、CD音源では聴こえなかった楽器の音まで聴こえると驚きの声も。

 ハイレゾの音を楽しむには、“ハイレゾ用の音源”と“ハイレゾ対応の再生機器”が必要となります。

 ハイレゾ音源を手に入れるには、インターネットの配信専用サイトからダウンロードする方法が一般的です(1曲400円程度)。CDのようなディスク状のソフトは存在しません。「e-onkyo music」「mora」「HD-Music」「OTOTOY」など、数々の配信サイトが登場し、競合しています。

 次に必要なのが、ハイレゾ対応機器です。[ソニー][JVCケンウッド][ヤマハ][パナソニック]などの音響メーカーから、携帯型音楽プレーヤーやアンプ、ヘッドホン、スピーカーといったハイレゾ音源再生のための製品が続々と発売されています。

 最も簡単な楽しみ方は、音源を入手したら、パソコンにハイレゾ対応ヘッドホンを挿して聴くだけ。また、スマホでダウンロードして、ハイレゾ対応のオーディオに接続すればどこでもハイレゾ音質の音楽が楽しめます。

 [日本オーディオ協会]は昨年6月、ハイレゾ対応機器に共通の「Hi-Res AUDIO」マークを付けることを制定して、ハイレゾ普及を後押ししています。また、ミュージシャン側からもハイレゾは歓迎ムードで、通常のCD発売と同時にハイレゾ用の音源も配信するといった動きが高まっています。

 音響機器メーカー各社がハイレゾに力を注ぐ背景には、1998年をピークに歯止めがかからない音楽市場の縮小があります。音楽をより良い音で楽しみたいユーザーの要求と、市場を活性化させたいメーカー側の思惑とを合致させてくれた「ハイレゾ」。物ごころついた時から圧縮音楽に囲まれて育った若者がハイレゾ音源の素晴らしさに出合った時の“感動”こそが、低迷するマーケットの救世主になるのかもしれません。

※参考:
e-onkyo music          http://www.e-onkyo.com/
mora                http://mora.jp/
HD-Music             http://hd-music.info/
OTOTOY             http://ototoy.jp/
ソニー               http://www.sony.jp/
JVCケンウッド          http://www.jvckenwood.co.jp/
ヤマハ               http://jp.yamaha.com/
パナソニック           http://panasonic.co.jp/
(社)日本オーディオ協会    http://www.jas-audio.or.jp/
朝日新聞(2014年12月22日付)
日経産業新聞(2015年3月10日付)