高齢化のおかげ? 加速する「キャップ付き紙パック」の普及

飲料容器市場ではペットボトルに押され気味だった「紙パック」のシェアが、2017年、6年ぶりに上昇に転じました。そのけん引役は、「キャップ付き」容器の普及です。これまで紙パックの主流だった“屋根型容器”(ゲーブルトップ)は、“一度に飲みきれない”ことが隠れた難点でした。加えて、開口部を両手で左右に広げるための力が必要で、握力の弱まった高齢者にとってはストレスとなっていました。その点“キャップ付き”は、力を入れなくても開け閉めがしやすく、繰り返し開閉できる(リキャップ)という大きな利点を獲得。この“リキャップ”こそ、最近のコンビニでの飲料ヒット商品に共通するキーワードといわれるほど、売れ筋を大きく左右する要素となっているのです。そのおかげで、“直飲み”が可能となると共に、トレンドである、オフィスや移動中、屋外などで、少しずつ時間をかけて飲む“チビだら飲み”のニーズにも応えます。
商機と捉えた容器メーカー各社は、相次いで新容器を投入。
[日本製紙]は、2019年3月期のキャップ付き紙容器の供給量を前期比の5倍増に。[日本テトラパック]のキャップ付きの出荷量は、この3年間で約2倍に。中でも、小容量(330ml)のキャップ付きが5倍に、中容量(500ml)も3倍と大きく伸びています。

飲料・乳業メーカー各社も、本格的にキャップ付きの採用に踏み切っています。
[明治]は昨年、「明治おいしい牛乳」(900ml)の紙パックをキャップ付きに全面刷新。[森永乳業]では現在、300~500mlタイプでキャップ付きの割合が4割にまで達しました。[伊藤園]は昨春、「1日分の野菜」など、1Lタイプの屋根型大型紙パックにキャップ付きを導入。野菜飲料業界では初の試みとなりました。[キリンビバレッジ]の果汁飲料「トロピカーナ」シリーズにもキャップ付きを採用。底に沈みやすい果実成分が混ざるように、ぐるっと逆さにすることができると好評です。
いずれの商品も、キャップ付き採用後は売れ行きが好調で、明らかに切り替え前より上回っているとのこと。

開けやすく、注ぎやすく、持ち運びしやすく、衛生面も優れている—-旧来型の屋根型パック飲料の購入者の約7割が男性だったのに比べ、「キャップ付き紙パック」商品の購入者は、年齢を問わず圧倒的に女性の割合が多いことがわかっています。まさに、“たかが容器、されど容器”。
今後、“脱・プラスチック”の本格的な広がりが予測される中、環境規制を追い風とした紙容器全体の存在価値が、改めて評価されることになりそうです。

※参考:

日本製紙             https://www.nipponpapergroup.com/
日本テトラパック         https://www.tetrapak.com/jp
明治               https://www.meiji.co.jp/
森永乳業             https://www.morinagamilk.co.jp/
伊藤園              https://www.itoen.co.jp/
キリンビバレッジ         https://www.kirin.co.jp/
日経МJ(2018年7月2日付)