惜しい、さみしい”の声届かず。止まらぬ、地方百貨店の大量閉鎖。
街の顔として市街地の中心に位置し、商店街の核となって地域経済をけん引してきた地方百貨店の閉店が、全国で後を絶ちません。
昨年2月、[そごう・西武]が「西武春日部店」を閉店。次いで「西武八尾店」「西武筑波店」を今年2月に閉鎖すると発表。9月には、日本最北の百貨店「西武旭川店」と「そごう柏店」が閉店。さらに同じく9月、業界最大手の[三越伊勢丹ホールディングス(HD)]が「三越千葉店」と「三越多摩センター店」の閉鎖を発表(ともに今年3月閉店)。このニュースが業界内外を駆け巡るや、“あの三越伊勢丹でさえ”という空気が広まり、消費者である私たちにも改めて百貨店業界が置かれている厳しい状況を思い知らされることとなりました。一方で、これが引き金となり、各社とも、どこが口火を切るかという我慢比べをしていた状況を脱し、地方店の閉鎖に弾みがついたともいわれています。
ピーク時(1991年)には9兆円強の売上高があった百貨店の市場規模は、2016年にはその3分の2である6兆円まで縮小。百貨店の主力アイテムである衣料品の販売低迷が最大の要因といわれています。また、2015年に沸き起こったインバウンドの“爆買い”消費も、その恩恵を受けたのは東京、大阪、福岡の3都市のみ。地方の百貨店にとっては“遠い話”でしかなく、現実は、周辺のショッピングセンターやネット通販などに客足を奪われ、さらに地域の人口減少や地方経済の疲弊、顧客の高齢化、建物の老朽化などが相まって売り上げ低迷の大苦戦を強いられることに。
閉店連鎖の波は止まらず、阪急阪神百貨店を運営する[エイチ・ツー・オー リテイリング]が、今年7月に「堺 北花田阪急」の閉鎖を決定。[三越伊勢丹HD]はさらに、「伊勢丹松戸店」「伊勢丹府中店」「広島三越」「松山三越」の4店について、2018年度を目途に縮小もしくは閉鎖を示唆。
これまで都心部の旗艦店で地方店の不振を補ってきましたが、旗艦店自体も昨春以降、インバウンドバブルが弾けて急激に業績が悪化。もはや、グループ全体で地方の赤字店舗を支えるどころではなく、都心部の店舗に経営資源を集約して収益力の回復を目指す戦略にカジを切らざるを得なくなったというのが実情です。
商店街の中心にある百貨店がなくなると市街地の空洞化を招くとして、地元住民の抵抗が強いのはどの地方でも同じ。しかし、支えきる力を失った大手百貨店にしてみれば、背に腹は代えられないというのが苦しい胸のうちのようです。
いまはまだ、大量閉鎖時代に突入したばかり。地方の百貨店や住民にとっては、これからも厳しい冬の時代が続きそうです。
※参考:
そごう・西武 http://www.sogo-seibu.co.jp/
三越伊勢丹ホールディングス http://www.imhds.co.jp/
エイチ・ツー・オー リテイリング https://www.h2o-retailing.co.jp/
朝日新聞(2016年10月1日付/同10月7日付/同11月9日付)
日経МJ(2016年10月7日付)