ビジネスとしての、「公立図書館」民間経営の行方

“官から民への行政改革”の掛け声、さらにはひっ迫した地方財政の台所事情改善の意味もあって、これまで行政や自治体が行ってきたサービスについて民間委託の導入が活発になっています。

1館あたりの運営費が年間1億円以上にもなるといわれる公立図書館とて例外ではなく、運営の合理化、経費・職員の削減、サービスの質の向上などを狙った民営化の動きが加速しています。図書館など、公共施設の管理・運営を民間企業やNPO、公益財団に代行させる「指定管理者制度」が2003年に制定され、現在、全国約3200館のうち2割近い650館でこの制度を導入しています。

民間運営で最も“有名な”図書館が、マスコミにも大々的に取り上げられ一躍脚光を浴びることとなった、佐賀県の「武雄(たけお)市図書館」です。レンタル店「TSUTAYA」を展開する[カルチュア・コンビニエンス・クラブ]を指定管理者として2013年にリニューアルオープン。特徴は、従来の図書館像にしばられず、書店(蔦屋書店)とカフェ(スターバックス)を一体化させた点。年中無休、朝9時から夜9時まで開館。天井近くまでの書架やゆとりある空間づくり、音響など、自治体では考えつかないようなアイデアが散りばめられています。5万人の町に、初年度は92万人が来館し、経済効果は20億円。地方創生の画期的手法と、高く評価されました。

指定管理者サイドからみると、いくら運営努力しても委託管理料という収入の大黒柱が増えるわけではないため、できるだけコストを抑えて利益を確保しようとします。まして図書館のように、利用者から料金を徴収できない施設の運営においては、その傾向が顕著です。そのため、「武雄市図書館」のように、併設した店舗の営業で収入を得るといった形態の出現は必然で、今後の民間運営の前提になるのかもしれません。
この、通称“ツタヤ図書館”は、2年後の15年、偏った選書や蔵書の分類法などをめぐって再び注目を集めることとなりましたが、賛否併せて問題提起されたという意味では、公立図書館民営化の在り方を考えるうえで縮図的なモデルケースといえます。

積極的に民営化へと踏み込んでうまく機能している自治体が存在する一方で、図書館にオシャレは必要ない、公共施設としての本分を忘れてる、といった反対の声が根強いのも事実。また、下関市、魚沼市、小郡市などのように、一旦は民間委託に踏み切ったものの、その後、再び自治体“直営”に戻した例も少なくありません。

民間が運営すること自体が問題なのではありません。丸投げするのではなく、どこまでを、どのように民営化するのか—–これは委託する自治体側の課題です。
近い将来には、主従が逆転して、民間企業が民業収益のみで公立図書館を運営する日が訪れるかもしれません。

※参考:

カルチュア・コンビニエンス・クラブ    http://www.ccc.co.jp/
日本図書館協会              http://www.jla.or.jp/
朝日新聞(2017年8月5日付)