日本名物「自動販売機日本名物「自動販売機」が、街角から消えていく?
2000年以降続いている、消費者の“飲料自販機(以下、自販機)離れ”の傾向に歯止めがかかりません。設置台数は、年々右肩下がり。自販機の前に立って飲み物を購入するという行為自体が減ってきているようです。背景には、品ぞろえが豊富で本格的なドリップコーヒー販売が定着したコンビニの台頭、安価なスーパーやドラッグストアなどとの価格競争、ネット通販でのまとめ買い、東日本大震災以降の“マイ水筒”ブーム、さらには2008年のタスポ(たばこ自販機成人識別システム)導入でたばこ需要が減退。たばこ自販機での購入を敬遠した客がコンビニなどに流れ、併設されている飲料自販機での“ついで買い”が減ってしまったことも一因に。
飲料メーカーにとって、定価販売が原則の自販機は、利益率が高い、まさに“ドル箱”。特に大手の場合、自販機を自社で一括運営しているため、利益貢献度も高く、設置側に払う手数料を除けば、残りの利益を自社で総取りできるという魅力が。品ぞろえもメーカーの思い通りにでき、一般の商品のように小売店への販促費や割戻金といった経費も必要ありません。自販機はいわば、“小さな直営店”という位置付けなのです。
一時は、自販機こそ最も力を入れたい販路とばかり、各社が競って設置台数を増やす“陣取り合戦”を繰り広げていました。しかし、徐々に1台当たりの利益率重視の傾向が潮流となり、いまでは量から質へ、台数至上主義からの転換が図られています。飲料各社では、新規の設置に慎重になるのはもちろん、不採算自販機の撤去の動きが急速に進んでいるのが現状です。これによって同時に、新たな立地の奪い合いが始まっています。主戦場と目されるのは、比較的安定した売り上げが見込めるオフィスや工場、公共機関といった“屋内”。不特定の顧客を取り合う路面設置より、確実な固定客を見込めるという算段です。
新規の設置台数増が見込めない自販機市場。定価販売での収益が魅力だったはずの自販機ビジネスは、皮肉にも、そのメリットがハンデとなって足を引っ張る結果となってしまったようです。今後、自販機を巡っては、新たな利益追求の消耗戦が展開されそうです。
※参考:
日本自動販売システム機械工業会 https://www.jvma.or.jp/
朝日新聞(2018年2月6日付)