“やっぱり日本で生産”と、帰ってきた国内アパレルの課題山積。

 家電、自動車といった製造業を中心に、生産を国内へシフトする流れが加速しています。円安を背景に、生産拠点である中国の人件費高騰、原材料費アップによる生産コスト増、Made in Japanの世界的な信頼度向上、外国人観光客による日本製商品の高評価、などの要因が追い風となり、もはやわざわざ国外で生産する“うまみ”が激減したといえます。

 繊維業界とて例外ではありません。
 1990年代、バブル崩壊や円高の波を被ったアパレル企業は、商品企画は国内で、生産はコストの安い中国や東南アジアの工場へという選択を余儀なくされました。90年当時にはおよそ5割を占めていた国内縫製比率が、2013年には3%台まで低下。そこで、日本の繊維産業の活性化と純国産製品の魅力を国内外に伝えることを目的に、昨年、[日本ファッション産業協議会]が新しい認証制度「Jクオリティ」の導入を始めました。“素材(織り・編み)”“染色”“縫製”の3工程、すべてを日本国内で行った商品だけにこの認証が付与されます。認証されるには、企画・販売に携わるアパレルメーカーのほかに、まず生産3工程を担う工場が認証されて初めて商品そのものの認証が申請できるというハードルの高さ。今まで“黒子”に甘んじていた人たちにも光が当たる制度となっています。

 晴れて“純国産”のお墨付きを与えられた認証第一号は、[三陽商会]の「100年コート」でした。その他(一部)、[オンワード樫山]は「五大陸」スーツ、[レナウン]は「ダーバン」スーツ、[ワールド]は「リフレクト」ジャケット、[フランドル]は「イネド」のダッフルコート、などが認証取得。生産工場の認証は(一部)、織り・編み[宮田毛織工業]、染色[大津毛織]、縫製[寺田ニット]など。

 一方で、迎え入れる側である生産現場は困惑気味。一時は見放されたかたちとなり、多くの繊維事業者が廃業に追い込まれている状況下では、設備も人手もおいそれとは叶いません。さらに、ただでさえ不足がちな上に、生き残った日本の縫製工場には、その技術力を求めて欧米の高級ブランドからの依頼が殺到。自ら招いたともいえる業界の衰退は、いま大手アパレル間の技術力争奪戦を国内で繰り広げるという皮肉な事態を引き起こし、決して楽観視できない様相を呈しています。

 “日の丸アパレル”の販売事業者と製造事業者が一丸となって立ち上げたオールジャパンのプロジェクト、「Jクオリティ」。地方の繊維関連事業の活性化につながると、国も、“クールジャパン構想”の一環として後押しします。
いかに、消費者に純国産の価値を理解してもらい、購買につなげていくことができるか—–今度こそ、一過性ではない、ポリシーを持った取り組みが問われています。

※参考:
日本ファッション産業協議会    http://www.jfic.jp/
日経МJ(2016年1月8日付/2月8日付/2月14日付)
日経産業新聞(2016年2月3日付)