10年で生産量4割増。「ツナ」を超えた、「サバ缶」ブーム。

きっかけは、2013年に放送された、あるテレビ番組でした。そこで、「サバを食べると美容・ダイエット効果がある」と紹介されるや、女性を中心に「サバ」が大ブレイク。その後もメディアに頻繁に取り上げられて人気に拍車、一気にブームとなりました。おかげで「サバ缶」は飛ぶように売れ、多くのスーパーで品薄状態に。もともと“メンズ缶”と呼ばれるほど男性からの人気が高かったサバ缶も、これを機に女性という新たな顧客層を獲得したのです。

その動きに呼応して、水産大手をはじめとするメーカー各社は、20~30代女性の需要喚起を狙い、目新しい味やオシャレなパッケージのサバ缶を続々と発売。

“お元気ですか?”という意味のフランス語“サヴァ”を商品名にした「サヴァ缶」(岩手県産/税込380円前後)も登場。オシャレサバ缶の先駆けといわれる商品で、“オリーブオイル漬け”“レモンバジル味”“パプリカチリソース味”の3種類。書店や雑貨店でも販売されており、ギフトとしても好評です。

異色のサバ缶として話題となったのが、「No.38(ナンバー・サーティーエイト)」(アバランチ)という、1缶1200円(税別)の高級缶。缶詰とは無縁の、大阪の広告制作会社が設立20周年の記念品として作ったところ、予想外の大反響で商品化。3種の味のラインアップで、高額ながら人気を博しています。
八戸の水産加工品会社[マルヌシ]から今春発売されたのは、脂の乗りが抜群の“八戸前沖さば”を使った「八戸サバ缶バー」。味は、“ゆずこしょう”“アヒージョ”など6種類(各、税込410円)で、18年度青森県特産品コンクールの最高賞(知事賞)を受賞しました。

サバ缶は、2016年に、生産量で長年首位の座に君臨していたツナ缶を追い越すと、翌17年、今度は売上高でも初めてツナ缶を抜いてトップに躍り出るという快挙を記録。
この勢いは、サバを観光の起爆剤に、と地域経済をけん引するまでに発展。「全日本さば連合会」が開催する「鯖サミット」(2014年から)や全国のサバを楽しむ「鯖ナイト」など、サバ食文化の普及に取り組む各地方で数々の“サバイベント”が催され、盛り上がりを見せています。

かつて産地では、値も安く価値のない魚として冷遇されがちだった、サバ。しかし、そのありがたみの薄い、あまりに当たり前すぎる魚が、今や“スーパーフード”に大化けし、メーカーに“缶詰界のエース”とまで持ち上げられるまでに出世しました。空前のサバ缶ブームは、女性層という心強い援軍を得て、ますます脂が乗ってくることでしょう。

参考:

公益社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会 http://www.jca-can.or.jp/
岩手県産                   https://www.iwatekensan.co.jp/
アバランチ                  http://www.avalanche.co.jp/
マルヌシ                   http://www.marunushi.co.jp/
全日本さば連合会               http://all38.com/
朝日新聞(2018年6月27日付)