増えてます、外食のお相手は“自分”。夜の「一人めし」が、至福の時間

いまや、さまざまな分野で一人客のための“ぼっちサービス”が充実し、空前の「お一人様」ブームが訪れています。いえ、すでにブームを通り越して当たり前の風潮になってきた感すらあります。

なかでも、人気漫画『孤独のグルメ』の主人公さながらに、いま20~30代男女の外食店での「一人めし」、それも「一人夜めし」が広がっています。

といっても、ファストフード店やラーメン店、牛丼チェーンといった場所ではなく、赤ちょうちんや居酒屋、あるいはビストロやスタンディングバーなど、料理だけでなく雰囲気も味わえる店で、誰に気がねすることなく、好きな料理を好きなだけ自分のペースで食べながら、自分に“お疲れさま”と乾杯。

友人を誘う面倒さも、同僚と一緒の気遣いも、相手のペースに合わせるしんどさも不要です。そこには、“周りの目が気になる”とか“友達がいないと思われる”といった抵抗感を超えた、一人で過ごす時間を満喫する充実感があります。孤独な“ぼっち”ではなく、ポジティブに一人を楽しむ、まさに“ソロ充”ともいえる時間です。

ある調査によると、2015年度の“一人夜めし”の外食単価は1211円と、対前年比で12%増。相手別でみると、“家族・友人”に次ぐ3位が“自分”で、伸び率は最大。年々増える傾向にあります。

一人夜めしブームに拍車をかけているのが、スマホとSNSの存在です。スマホで検索して話題のお店を開拓し、食べた料理の写真を友人とシェア。他者と緩くつながり、共感し合えるSNSのおかげで“ぼっち感”が薄れ、“一人”=“寂しい”というイメージを大きく変えました。

そんな背景があっても、男性の4割、女性の6割が一人で外食することに抵抗があるとのこと。そこで外食各社は、不安を払拭して一人でも入りやすい店づくりに知恵を絞ります。

例えば、しゃぶしゃぶ専門店では楕円形のカウンターに一人ずつの銅鍋を並べ、向かい合う客との距離は3m以上確保して強い視線を感じないように配慮。

また老舗和食店では、これまでなかった一人用メニューを新たに設けて対応するなど、一人客市場に埋もれているビジネスチャンスの掘り起こしに懸命です。

一人を味わう—-いま、新たな日本の食文化として市民権を得ようとしています。

最後に“一人夜めし”派の方々にご忠告を。話し相手がいないので、ついつい食べるスピードが速くなってしまいがちです。血糖値の上昇にはくれぐれもお気をつけて。

参考:

日経МJ(2016年10月14日付/同12月14日付)