ペット社会も急速な高齢化。寿命が延びると、需要も伸びます。

ペットとして飼われている犬の数は約991万7000頭、猫は約987万4000頭(2015年/ペットフード協会)で、両方合わせると、日本の15歳未満の人口(約1617万人)をすでに超えているというから驚きです。ペットフードや医療の著しい進歩によって寿命が延び続け、犬の平均寿命が14.9歳、猫は15.8歳、共に人間の年齢でいうと約76歳に匹敵します(2015年調べ)。ちなみに犬の場合、1990年の平均寿命8.6歳から6.3歳も延びたことになり、これは人間に当てはめると、36歳も寿命が延びた計算になります。

関連各社は、“高齢”というコンセプトを次なるペットビジネスの主軸と捉え、きめ細かな商品開発に注力しています。
1986年からペット事業を展開する[ユニ・チャーム]は、昨秋、世界初となる高齢犬(7歳以上)対象の介護用品ブランド「ユニ・チャームペットPro」シリーズを立ち上げました。介護マット、尿吸収シート、体拭きシート、おしりまわり洗浄液の4点セットを、全国の動物病院を通じて販売。愛犬・飼い主、双方の介護負担を軽減するのが目的です。
フランスのペットフードメーカー[ロイヤルカナン]の「ベテリナリー ダイエット」は、獣医師の指導のもと、200種以上の犬・猫用の食事療法食を展開しています。
高齢ペットのためのオーラルケア用品も登場。
[ライオン商事]の犬・猫用歯ブラシ「ペットキッス 指サック歯ブラシ」は、ぐにゃりと曲がるボディの指先にブラシが付いており、奥歯までスムーズに磨けるのが特徴。犬の歯は、歯垢が歯石へと変わる速度が人間の5倍といわれており、高齢犬の必需品となりそう。

高齢ペットの市場拡大を見込んで、ペットとは縁遠かった異業種からの参入も目立ちます。特に、カメラやセンサーを活用した“ペットIoT”の動きは活発です。
犬の見守りサービス「わんダント2」を展開するのは[富士通]。センサー内蔵の装置を犬の首に付け、歩数や“ぶるぶる”の回数などを計測・分析して愛犬のハッピー度を飼い主のスマホに知らせます。
ソフトウェア開発の[アニコール]は、スマホアプリと連携して、興奮、欲求、リラックスといったペットの気持ちを知らせる、動物用ウェアラブル端末「しらせるアム」を開発しました。

肥満、認知症、訪問介護、デイケアサービス、食事療法、健康寿命……人間と同じ道を辿り始めた高齢ペットたち。今後、さらに寿命が延びることを考えれば、高齢ペットビジネスの需要がいっそう高まるのは自然の成り行きといえます。

※参考:

一般社団法人ペットフード協会     http://www.petfood.or.jp/
ユニ・チャーム            http://www.unicharm.co.jp/
ロイヤルカナンジャポン        https://www.royalcanin.co.jp/
ライオン商事             http://www.lion-pet.jp/
富士通                http://www.fujitsu.com/
アニコール              http://anicall.info/
日経MJ(2016年11月16日付)
日経産業新聞(2017年1月23日付)
朝日新聞(2017年2月2日付)