少数派の不満をビジネスに。「小さなサイズ」の大きな市場。

 ファッションや下着業界で、少数派の不満をビジネスにつなげようとする動きが活発化しています。

 通常、レディースのSサイズは、だいたい身長158cmのサイズを基準に作られているため、それ以下の小柄な人にとっては、袖丈や股下が長すぎる、襟ぐりが開きすぎる、アームホールがブカブカ、また着丈が長すぎるのでお直しするとシルエットが台無しになったりと、要するにぴったりサイズを着たことがない!というのが切実な悩みとなっています。

 [ニッセン]が展開しているのは、身長152cm前後(147~154cm)の20~40代女性のためのライン「プッチージョ」(“プチ”な“女子”からネーミング)。前年比7割増と好調の要因は、同社独自のサイズ設計から生まれるフィット感。これまでの大多数の“小さなサイズ”は、単に標準サイズ(9号)をダウンサイジングしただけでしたが、「プッチージョ」は小柄な女性の骨格から見直し、肩幅、袖丈をはじめ、腰からヒップまでの長さなど細かいディテールまで測り、独自に型を起こしてショートサイズ設計されています。着た時のバランスを重視し、ボタンを小さめにしたり、襟や柄も小さめにするほどのこだわりも。

 [三愛]の“小柄な女性”御用達店は、その名も「S357」(東京・銀座)。3号、5号、7号のサイズを中心とした品揃えで、店頭スタッフのほとんどが身長150cm前後という徹底ぶり。スタッフ自らが全商品をフィッティングし、細部にわたってチェックしています。

 2012年に「すごい下着発明部」というプロジェクトを立ち上げた[ワコール]は、同社の人体計測データやSNSの書き込みなどを基にした“不満解決商品”を開発し、ネット通販で販売しています。そこから生まれた大ヒット商品が「Aカップさんのためのブラ」。2014年1月には、もっと小さな胸にも対応してほしい、とのリクエストに応えて「AAカップタイプ」も登場。シリーズ合計で目標を上回る好調な売れ行きを見せています。

 イレギュラーサイズといえば、大きなサイズに力を入れるのが衣料業界の“常識”でした。大柄サイズの需要の方が市場的に大きいことに加え、“小さなサイズ”はロットが小さい分、原価率も上がり非効率と敬遠されてきました。にもかかわらず最近、大手百貨店やアパレルメーカーでは、積極的に“小さなサイズ”の独自ブランドを展開。ユーザーが長らく抱えていた不満が解消されれば、それは確実に固定客となってリピーターへとつながります。“小さなサイズ”という小さな市場は、大きな市場となり得る多くの“ヒットの芽”をはらんでいるといえます