近ごろのサラリーマン御用達。コスパの“ちょい飲み”、「立ち飲み居酒屋」
外食市場全体が縮小傾向に陥るなか、特に居酒屋業界は衰退の一途。好調なのは比較的新しい激安居酒屋チェーンくらいで、団体客相手の、強制的に“お通し”が出されるような古いスタイルの総合居酒屋チェーンは、軒並み苦戦を強いられています。
そんな、体力の弱った居酒屋業界をさらに脅かす存在が出現しました。“ちょい飲み”ブームの台頭です。駅前や繁華街には「立ち飲み居酒屋」が急増。安くて、旨くて、男女を問わず気軽に入れるカジュアルな雰囲気。サクッと飲んで、サクッと帰る、長居無用の“ちょい飲み”スタイルが、節約志向や残業削減でコスパを気にして飲まざるを得ない現代サラリーマンの切実なニーズにマッチしたといえます。
アツアツのたこ焼きをつまみに、キンキンに冷えたハイボールが楽しめる立ち飲みスタイルの店「築地銀だこハイボール酒場」が、[サントリー]と[築地銀だこ](ホットランド)のコラボで実現。首都圏を中心に展開中です。
驚愕の安さで話題となっているのが「立呑み 晩杯屋(ばんぱいや)」(トリドールHD)。煮込み130円、げそ焼き150円などで、最も高くて、極厚ハムカツ300円。安いのに旨いと人気です。
ドラム缶をテーブル代わりにした立ち飲み屋は、その名も「ドラム缶」(ドラムカンパニー)。チューハイ150円、つまみの9割以上が300円以下で、“2杯飲んで、1品食べて、500円”が売り。内装工事費はほぼ0円、家賃の安い2階以上に出店するなど、徹底したコスト節約でこれほどの低価格メニューを実現。
小資本による個人経営的色合いの濃かった“ちょい飲み”市場でしたが、ここにきて、大手外食チェーンも続々と参入。市場は、新旧・大小入り乱れて、またたく間に大きく膨らんでいきました。
“ちょい飲み”の先駆者として市場を開拓したのが、熱烈中華食堂「日高屋」。ラーメン+餃子+ビールでも1000円でお釣りがくると評判になり、増収増益が続きます。牛丼[吉野家]の黒字化に貢献したといわれる「吉呑み」や、[すき家]の「呑みすき」、[なか卯]の「呑み卯」などをはじめ、立ち食いそば[富士そば]の「ふじ酒場」、[リンガーハット]の「ちゃんぽん酒場」、コンビニ[ミニストップ]の「cisca(シスカ)」、博多ラーメンの「一風堂スタンド」などなど。また、コーヒーチェーンやファストフード、ファミレス各店もアルコールメニューを拡充して“ちょい飲み”需要に対応。新たな収益源として大きな期待が寄せられています。
“1人~3人程度で”“滞在時間1時間以内”“飲んでつまんで1000円以内”がキーワードの“ちょい飲み”。男女とも単身者が増えているという昨今のご時世あらば、今後いっそう、この市場の拡大余地があろうかというものです。
参考:
一般社団法人 日本フードサービス協会 http://www.jfnet.or.jp/
サントリー http://www.suntory.co.jp/
築地銀だこ https://www.gindaco.com/
トリドールホールディングス http://www.toridoll.com/
ドラムカンパニー https://drum-company.net/
ハイデイ日高 http://hidakaya.hiday.co.jp/
吉野家 http://www.yoshinoya.com/
すき家 https://www.sukiya.jp/
なか卯 https://www.nakau.co.jp/
富士そば https://fujisoba.co.jp/
リンガーハット http://www.ringerhut.jp/
ミニストップ http://www.ministop.co.jp/
力の源ホールディングス(一風堂) http://www.chikaranomoto.com/
朝日新聞(2018年7月4日付)