走り出しました。究極のエコカー、「燃料電池車」。

 タンクに蓄えた水素ガスと空気中から取り込んだ酸素との化学反応によって発生する電気でモーターを回して走行する「燃料電池車=Fuel Cell Vehicle(FCV)」。走る時に排出するのは水(水蒸気)だけのため、“究極のエコカー”と呼ばれています。

 1回の充電(約30分)で約200km走る電気自動車に対し、1回の充填(約3分)で約700km走る「FCV」。2011年、自動車メーカー3社(トヨタ、日産、ホンダ)とエネルギー事業者10社は『燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明』を発表しました。2015年までにFCVの量産車を導入し、水素充填スタンド(水素ステーション)も4大都市圏へ100ヵ所程度の整備を目指そうというものです。

 では、本格市場導入まであと1年ほどとなった現在、「FCV」の進捗状況はどうなっているのでしょうか。

 20年前から「FCV」の開発を続けている[トヨタ]は、2002年に日米で「FCV」のリース販売を開始。1台1億円ともいわれ、リース料も月額約120万円。納入先は官公庁に限られていました。2013年には、独BMW社と2020年の発売を目指して共同開発で合意。そして、今年6月、今年度中(12月~来年1月頃)に日米欧でセダンタイプの「FCV」を発売すると発表。一般向けとしては世界初となります。価格は約700万円を想定。課題だった高価格も、ハイブリッド技術(部品)を共用することで実現にこぎつけました。

 [ホンダ]は、2002年に「ホンダFCX」、2008年に「FCXクラリティ」のリース販売を開始。2013年に米GM社との共同開発を発表し、2015年には日米欧で「FCV」の発売を目指します。

 2003年に「X-TRAIL」のリース販売を開始している[日産]は、2013年に独Dimler、米Ford Motor両社と「FCV」の開発で提携。2017年に「FCV」の量産開始を予定しています。

 現在、「FCV」普及への最も高いハードルとなっているのは、インフラ、つまり“水素ステーション”にあると考えられています。

 前述の“2015年に100ヵ所”という目標は厳しそうな現実です(6月現在で17ヵ所)。建設コストがかかりすぎるのが最大の難点で、1億円弱で済むガソリンスタンドに対し、水素ステーションは5~6億円! そこで経産省は2013年に、建設費用の最大半額を補助する制度をスタートさせました。さらに、2015年度から「FCV」をエコカー減税の対象とし、購入者への補助金制度も実施の予定です。

 2015年は“FCV元年”だ。いやいや、本格的立ち上げは2020年頃になるだろう……様々な方向から、様々な声が聞こえてくる「FCV」。いずれにしても、2015年に、世界に先んじて一般市場導入を果たす意義は小さくはないはずです。

【参考】
経済産業省     http://www.meti.go.jp/
トヨタ自動車      http://toyota.jp/
本田技研工業    http://www.honda.co.jp/
日産自動車     http://www.nissan.co.jp/
日経産業新聞(2013年12月18日付)
朝日新聞(2014年6月5日付/同6月26日付)