堂々と「副業」ができる時代に。欲しいのは、お金より経験や人脈。

2016年12月、政府は「働き方改革」の一環として、正社員の副業・兼業禁止規定を廃止し、“原則禁止”から“原則容認”に方針転換すると発表しました。本業以外の仕事に手を出すなどもってのほかというこれまでの企業文化を考えれば、終業後や休日のオフタイムを活用して本業とは別の仕事に就くことに、国がお墨付きを与えて後押しするというのですから、大きな転換といえます。

国側の思惑は、労働力不足が深刻化しつつあるいま、一人ひとりの生産性を上げるための副業推進が狙い。あくまでも、社員が副業を通じて、新しい価値観や新たな人脈、経験を獲得して本業へフィードバックすることが前提です。
働く側としては、特にリーマンショック以降の不況で就職難を経験した世代は、倒産やリストラで職を失った場合に備え、一つの会社に依存することの怖さを肌で知っており、副業によるリスク分散の意識がより高いといえます。
一方、企業側としては、副業容認にはまだ抵抗感があるのも事実。本業がおろそかになったり、副業をきっかけに優秀な人材が社外へ流出することや情報漏洩のリスクなどを恐れているからです。しかし最近では、副業容認という選択肢を用意することが、社員のモチベーションアップにつながったり、人材のつなぎ留めにもなるということに企業サイドも気付き始めました。
[ロート製薬]は、昨年から副業解禁を宣言。入社3年目以上の社員を対象に「社外チャレンジワーク制度」を導入したところ、さっそく60人ほどが立候補し、小売業やNPOなどで働き始めています。
同じく昨年、副業容認した[クラウドワークス]では、制度導入以降、新卒・既卒問わず、入社希望者が著しく増加したとのこと。
ソフトウエア開発の[サイボウズ]は、「選択型人事制度」を設けて副業解禁に踏み切りました。一定の条件を満たせば、副業することの届け出も不要。この制度導入の効果で離職率が劇的に下がりました。

会社勤めをしながら副業したり起業することは、欧米では当たり前のことです。本業と第二のキャリアを両立させる生き方は、“パラレルキャリア”と呼ばれ、自らのキャリアアップにつながる“転職への足がかり”と捉えています。副業で報酬を得ることが第一の目的ではなく、スキルアップや夢の実現、社会貢献などが主な活動となっています。この点が、本業への還元を第一の使命と考える日本のビジネスパーソンと異なるところかもしれません。

動き始めたばかりの「副業解禁」ですが、副業しているのが当たり前の社会になる日は、意外に近いのかもしれません。

※参考:

厚生労働省       http://www.mhlw.go.jp/
経済産業省       http://www.meti.go.jp/
ロート製薬       http://www.rohto.co.jp/
クラウドワークス    https://crowdworks.jp/
サイボウズ       https://cybozu.co.jp/
日経MJ(2017年3月1日付)