本当の“特別”って? 新鮮味薄れる、「プレミアム商品」。

 少々価格が高いにもかかわらず、より良い素材や製法にこだわって、消費者の“プチ贅沢”需要を取り込んでいる「プレミアム商品」。食品業界を中心にさまざまな分野で花盛りで、極み、ゴールド、本格、贅沢、大人の、特撰、リッチ、匠、などといったワードを冠に、定番商品よりワンランク上の高級イメージで訴求し、購買意欲をかき立てます。

 しかし、そんな順風満帆かに見えた「プレミアム」市場も、ここにきて風向きが変わってきたようです。これだけ出回るともはや“氾濫”ともいえる状況で、「プレミアム」という言葉の持つ“特別な”“希少な”“選ばれた”という本来の特別感が薄れてきたのです。

 そもそも「プレミアム」を定義する明確な基準はありません。言い換えれば、メーカーによってマチマチです。通常商品より製法や材料がコスト高になった分、価格に上乗せさせたから「プレミアム」だったり、濃厚な味付けで“プレミアム感”を出したり、高級感のあるパッケージで「プレミアム」商品に格上げされたり、果ては企画担当者の直感だけで「プレミアム」と命名されることも。

 なかには、「消費者の優良誤認につながりかねない表現は基本的に禁止している」(雪印メグミルク)、「何をもってプレミアムなのか判断できない」(マルハニチロ)といった姿勢で「プレミアム」を名乗らない企業もあります。また、「セブンゴールド 金の食パン」が大ヒットした[セブン&アイ・ホールディングス]では、「ゴールドを、そう簡単につけてはいけない」という厳しい基準を設けています。

 消費者は「プレミアム商品」を、“高価格なのだから当然おいしいだろう”との思いで購入します。しかし、“おいしくなかった”“通常商品との違いを感じない”“素材の良さを感じない”といった声も少なくなく、ある消費者調査によると、3割強が“買ってがっかり”との感想も。

 皮肉なことに、トレンドとなった故に消費者の感覚がマヒし、その神通力が薄らいだ感のある「プレミアム」商品の数々。もはや、売らんがための名前だけの「プレミアム」では、他社との差別化にはならないことは明らかなようです。

※参考:
サントリー食品インターナショナル  http://www.suntory.co.jp/
大塚食品           http://www.otsukafoods.co.jp/
カルビー            http://www.calbee.co.jp/
森永乳業           https://www.morinagamilk.co.jp/
山崎製パン          https://www.yamazakipan.co.jp/
湖池屋             http://koikeya.co.jp/
雪印メグミルク        https://www.meg-snow.com/
マルハニチロ         http://www.food.maruha-nichiro.co.jp/
セブン&アイ・ホールディングス  http://www.7andi.com/
日経МJ(2015年5月15日付)