顧客争奪の混戦に拍車。群雄割拠の様相、「食の宅配ビジネス」

共働き世帯の増加やライフスタイルの多様化に加え、高齢者を中心とする“買い物弱者”の増加といった社会的要因もあり、食の宅配サービスへのニーズは年々高まるばかり。そこに、スマホ(インターネット)という強力なツールが加わって、宅配ビジネスが一段と過熱。熾烈な顧客争奪戦が沸き起こっています。

コンビニ各社は、新しい収益源として、弁当などの宅配サービスに熱い視線を送ります。
[セブンイレブン]では、店舗で購入した弁当などを自宅まで届ける宅配サービス「セブンミール」を全店の7割超で展開中。しかし、十分な人手を割くのが難しいため、2017年、宅配業務を[セイノー]に委託。“ハーティスト”と呼ばれるセブン専属の配達スタッフが送り込まれ、複数の店舗を巡回して宅配を代行しています。
[ファミリーマート]は、高齢者向け宅配弁当の配送網を活用して、弁当と一緒に同店の商品を届ける「買物お助け便」を実施。配達時には利用者の安否確認も行います。
[ローソン]は、スマホなどから注文した食材を、毎週、指定した時間帯に届ける「ローソンフレッシュ」を展開中。

ネット事業者による宅配サービスも台頭しています。
[アマゾン]は、プライム会員向けに、今年4月、生鮮食品の宅配サービス「アマゾンフレッシュ」を開始。[楽天]では、2015年から、最短20分で配送する食品宅配サービス「楽びん!」を展開しています。
800以上のレストランと提携し、スマホからのオーダーでどんな指定場所にでも届けてくれるフードデリバリーサービス「ウーバーイーツ」が米国から上陸。配達員登録をした一般の人が、自転車や原付バイクで料理を届けるというユニークなシステムが話題に。

また、野菜を届ける宅配サービスでは、“調理キット”の販売を強化。
大手の[らでぃっしゅぼーや]は、副菜2品と汁物が10分で作れる食材セット「彩菜セット一汁二菜」を発売。[オイシックス(Oisix)]では、主菜と副菜が20分で作れる「キットオイシックス」を販売しています。
一方で、宅配のベテランともいうべき、ピザ・寿司業界では、配達スタッフ不足が深刻化。バイクの免許を持たない学生や主婦、シニア、外国人でも配達できるよう、電動自転車を導入して人手確保に懸命です。

2019年度には、2兆1470億円まで拡大すると見込まれている宅配ビジネス市場(矢野経済研究所)。宅配各社は今後さらに、ウェブでの注文の比率を高め、電話での接客時間の短縮、来店持ち帰りの増加など、効率的運営とともにスタッフの労働負担の軽減へと向かうのが潮流。
すでに、近い将来の導入に向け、ドローンや宅配ロボを使った配達の実証実験も始まっています。飲食系のITサービス、いわゆる“フードテック”の波は、想像を超える速さで世界中を席捲しつつあるようです。

※参考:

セブン-イレブン・ジャパン         http://www.sej.co.jp/
セイノーホールディングス          http://www.seino.co.jp/
ファミリーマート              http://www.family.co.jp/
ローソン                 http://www.lawson.co.jp/
アマゾンジャパン             http://www.amazon.co.jp/
楽天                   https://rakubin.rakuten.co.jp/
ウーバーイーツ              https://www.ubereats.com/
らでぃっしゅぼーや            https://www.radishbo-ya.co.jp/
オイシックス               https://www.oisix.com/
矢野経済研究所              https://www.yano.co.jp/
朝日新聞(2017年4月22日付)
日経産業新聞(2017年4月24日付/同6月8・9日付/同6月13・14日付/同7月25日付)