2年後には2倍に拡大。活発な動きを見せる「電子書籍専用端末」市場の、いま。

 1990年に、世界初の「電子書籍専用端末」([ソニー]の「データディスクマン」)が登場してから今年で25年。“新分野”とばかり思っていた電子書籍ですが、実はすでに四半世紀が経過したことになります。

 その間、2006年に[ソニー]が「リーダー」を引っ提げて米国・欧州の電子書籍市場に参入。翌2007年に[アマゾン]が「キンドル」を本国米国で発売。2010年には「リーダー」が日本で発売。北米などで電子書籍事業を手掛けるカナダの[Kobo(コボ)]社を子会社化した[楽天]が、2012年、端末「コボタッチ」で日本の電子書籍市場に参入。その3ヵ月後には、[アマゾン]が満を持して「キンドル・ペーパーホワイト」で日本上陸……そのたびに、何度、“電子書籍元年”と言われ続けてきたことでしょう。

 日本市場でのシェアは、「キンドル(アマゾン)」「コボ(楽天)」「リーダー(ソニー)」の順で、当然、拮抗した三つどもえの戦いになると思われていました。

 ところが今年3月、[ソニー]が北米で2009年以来営業してきた電子書籍ストアの閉鎖を発表。さらに6月には、欧州と豪州で展開している電子書籍事業からの撤退を表明。つまり、海外から完全に撤退することとなってしまいました。

 そもそも3社は出発時点から違いがありました。
ネット書店やEC(電子商取引)からスタートした[アマゾン]や[楽天]は共に、他社端末向けにも配信したり、紙の書籍の販売に力を入れながら自社端末との連携を推し進めるなど、フレキシブルにサービスの充実を図ってきました。自社端末の利益追求より、魅力あるコンテンツを届けることに重点を置きながら、とにかく電子書籍の認知拡大を第一に努めたのです。一方、世界のエレクトロニクスメーカーの雄として君臨する[ソニー]は、どうしても自社の端末の普及や収益のことを考慮する余り、他の2社のような大胆な価格戦略やユーザーを引きつける魅力的な戦力が打ち出しにくい状況にあったことは否めません。コンテンツの少なさ、紙媒体と比べての割安感の低さ、海外の「リーダーストア」の書籍は読むことができない、といったことなどがその要因と思われます。

 一般書籍全体からみた電子書籍の普及度合いは、米国が約20%に対し、日本は約8%。米国より3年遅れているといわれています。今後、「電子書籍専用端末」の覇権を巡っては[アマゾン]と[楽天]、2強の争いになると思われていますが、そこに忘れてはいけない強力なライバルが出現。スマホやタブレットの存在です。読書専用の電子書籍端末と、読書もできる多機能端末。さて、どちらがユーザーに響くことでしょう。

【参考】
ソニー http://www.sony.co.jp/
アマゾン http://www.amazon.co.jp/
楽天 http://kobo.rakuten-kobo.com/
日経産業新聞(2014年5月12日付)