人気沸騰。熱すぎない、冷たすぎない、「ぬるめ(常温)」の逆襲、始まる!
熱い食べ物はさめないうちに、冷たい食べ物はぬるくならないうちに、というのが美味しくいただく原則とされてきました。ところが最近、これまで“熱々”や“冷え冷え”が常識だったものを、あえて“ぬるめ”で提供する店などが増えはじめて話題となっています。
東京の立ち喰いそば店[ちかてつそば](メトロプロパティーズ)では、「ぬるそば280円」のメニューが目を引きます。“ぬるさ”のレベルには5段階あり、スタンダードの「ぬるそば」は、熱いスープを冷水で割ったもの。フーフー要らずで、一気に麺をすすったりスープを飲み干すことができます。汗もかかず、メガネも曇りません。「熱いと味がわかりにくい。ぬるい方がダシの香りや味わいがよくわかる」というのが店主の持論。
大阪では、創作うどん[御馳走UDONLIFE うれう]の「ぬるいUDON」シリーズが人気です。冷たい麺に温かい具材をかけ、かき混ぜることでぬるくするという“ぬるメニュー”を昼限定でラインアップ。
丸亀の[純手打ちうどん よしや]では、“あったかい”と“冷たい”の他に“ぬるい”があって、一押し人気となっています。
山形では、“ぬるいラーメン”が名物。[お食事処 葵]のメニューにあるのは、“ぬるい”と“冷たい”の2種類(日によって“熱い”もある)。ゆでた麺を一旦、冷水で洗い、その上に熱いスープをかけて全体をぬるく仕上げます。「ぬるいのが最高においしい。私たちの意図するスープの味が一番出るから」と、開店当初から、ぬるいラーメンを看板メニューとすることに迷いはなかったとのこと。
他にも、「ぬる中華」「ぬるまラーメン」など名称は異なりますが、なぜか山形県内ではぬるいラーメンが盛んなようです。
コンビニをはじめ自販機にも“常温ブーム”の波が押し寄せています。[アサヒ飲料]などメーカー各社は、オフィスの冷房で体が冷える女性や病院からの要望に応え、“HOT(約50度)”と“COLD(約5度)”の2種類しかなかった設定温度に、“常温(約20度)”を加える動きが広がっています。
また、[スターバックス]でも、「ライトホット」と注文するとぬるめに温度調整してくれるカスタマイズサービスを行っています。
体を冷やさない、喉や胃腸にやさしい、本来持っている味をしっかり感じることができる—–常温需要の高まりは、単に“温度”のモンダイというより、熱すぎず・冷たすぎず、中庸を善しとする日本人の精神文化の一つの表れなのかもしれない、などと考察するのは大袈裟でしょうか。
参考:
メトロプロパティーズ http://www.metro-pro.co.jp/
アサヒ飲料 http://www.asahiinryo.co.jp/
スターバックスコーヒージャパン http://www.starbucks.co.jp/
日経МJ(2016年6月10日付)