大手と中小の格差拡大。思うように回らない「回転寿司」経営。

低迷する外食産業の中にあって、ひとり気を吐いている勝ち組が「回転寿司」業界です。デフレを追い風にこの10年で売り上げは約1.5倍、いまや6000億円市場に成長しました。しかし、ライバル間の競争は熾烈さを増し、年々激化。生き残りのカギは、運営母体の“体力勝負”という厳しいサバイバルの様相を呈しています。

現在の回転寿司チェーンの勢力図は、“100円寿司”の四天王、「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」の順で、売上高シェアの7割程度を占めています(店舗数では、「はま」「スシロー」「くら」「かっぱ」の順)。
業界トップに躍り出た「スシロー」の経営方針は、“原価率50%のキープ”。一般の外食業界で25~30%、回転寿司大手でも40%台が常識の中、スシローは飛びぬけて高い原価率を維持。それだけ味や鮮度にこだわり、安易に低価格競争に巻き込まれなかったことが今日の好調の勝因といえます。
斬新なサイドメニューで“脱寿司化”を加速させている「くら寿司」。
「すき家」の[ゼンショーグループ]の経営で、最後発でありながら驚異の出店ペースを見せている「はま寿司」。
一方、“100円寿司”の老舗「かっぱ寿司」。2011年に「スシロー」に抜かれるまで業界トップとして君臨していましたが、低価格で勝負し続けたことが裏目に出て経営が悪化。原価率の低さ(30%台後半)が品質低下を招き、深刻な客離れにつながりました。現在は業界4位で、2014年からは外食大手の[コロワイド]傘下で経営再建中。

もともと原価率が高く、輸入食材頼みの経営構造の下で円安が打撃となり経営をひっ迫。そこに人件費や賃料などが加わると、店の利幅は、一皿、数円程度。皮肉なことに、売りのはずだった低価格戦略が、その利益率の低さから自らの首を絞めるといったケースが数年前から見られます。大手チェーンがサービスの充実を図って積極的に設備投資を行う一方、資金的余力のない中小チェーンは、売り上げが増えても利益が出ないという負の収益構造が恒常化。その結果、経営破綻に追い込まれ倒産に至る中小が少なからず出現しています。

いま業界は、“大手100円寿司チェーン”と“グルメ系回転寿司”の二極化が進んでいます。また近ごろは、回っているレーンからではなく、直接板前に注文して握ってもらう客が増えているといいます。それが何を物語るのか—–100円系回転寿司の限界説もささやかれる中、この業界は今後、異業種を巻き込んでの大再編時代に突入するのかもしれません。

※参考:

日本回転寿司協会         http://www.kaiten-sushi.or.jp/
あきんどスシロー         http://www.akindo-sushiro.co.jp/
くらコーポレーション       http://www.kura-corpo.co.jp/
ゼンショーホールディングス    http://www.zensho.co.jp/
カッパ・クリエイト        http://www.kappa-create.co.jp/
コロワイド            http://www.colowide.co.jp/
日経産業新聞(2016年11月18日付)