目に見えない“愛着度”を数値化。これからの経営のカギ、「顧客推奨度」とは

「あなたは、この〇〇(製品・サービス)を友人や同僚に薦めたいと思いますか?」
—–最近、お客様アンケートなどでこんな質問に出会うことが多くなりました。これは、企業そのものや、その企業の製品・サービスといったブランドに対する顧客の信頼度・愛着度(顧客ロイヤルティー)を測定して数値化するための質問で、「NPS=ネット・プロモーター・スコア(顧客推奨度)」と呼ばれる手法です。いわば、これまで計測することが難しいとされていた“ファン度の見える化”で、2003年に米国で開発。アマゾンやアップル、P&G、レゴなど、顧客志向の高い大手企業がこぞって導入し、有効性が証明されたことで急速に広がっていきました。
測定方法は、冒頭の質問に0~10点の11段階の評価で答えていくというシンプルなもので、その数値によって3つのカテゴリーに分けられます。9・10点が、満足度・再購入率ともに高く、他者への推奨度も高い顧客で「推奨者」。7・8点が、とりあえず満足はしているが他者に紹介するほどでもない「中立者」。0~6点が、製品に不満を持っていて悪評を広める恐れのある「批判者」。回答者全体に占める「推奨者」の割合から「批判者」の割合を差し引いた数値がNPSとなります。仮に、推奨者50%、批判者30%なら、20%がNPS値です。

「あなたは、この〇〇(製品・サービス)に満足しましたか?」——これまで、多くの企業で行われてきた「顧客満足度(CS)」調査の質問です。NPSと、どこが違うのでしょう。
大きく違うのは、業績との相関性。つまり、収益性と連動しているか否か、という点です。CSが、あくまでも過去~現時点での満足度評価なのに比べ、NPSは“薦めたいと思いますか”という未来のアクションを想定した行動予測が点数化されるため、今後の売上高や成長率に直結すると考えられています。実際に、ある製品から離反した客のうち、80%もの人が、直近のCS調査では「満足」「とても満足」と答えていたという、ぞっとするような調査結果もあります。大きな不満がないというだけで「満足」と回答する人が多く、その時「満足」していても、その後の購買行動に結びつくとは限らないことを如実に物語っています。
NPSが向上するということは、批判者が減って推奨者が増えることを意味しており、その結果、再購入・継続購入・追加購入の増加や購買単価の上昇、さらに他者へのポジティブな口コミといったメリットを企業にもたらします。

欧米では、業績上位企業の3分の1以上がNPSを活用。日本の企業の間でも、その効果は認識され、導入が進みつつありますが、CSの普及率と比べるとまだまだ“発展途上”といったところ。今後は、日本人の特性に準じた質問の設定や結果の分析などの開発がカギとなりそうです。

※参考:

日経МJ(2018年11月16日付)