ドライバー確保に生き残りがかかる、「トラック運送」業界。

 “即日配送”“送料・返品無料”“時間指定配送”—–利用者が当たり前と思って、日々、享受しているサービスに、いま黄信号がともっています。急成長を続け、拡大の一途をたどるネット通販の陰で、物流の命綱ともいえる「トラック輸送」の現場で異変が起きているのです。
 
 それは、深刻なトラックドライバー不足です。その要因の一つには、劣悪な労働環境があります。変則的で長い労働拘束時間の割には低い賃金。身体の負担が大きい手積み・手降ろしの荷役作業。加えて、規制緩和で運送事業者数が急増。乱立した小規模業者が低い運賃で仕事を奪い合う下請け体質がまん延、そのあおりでオーバーワークは常態化し、給料が下がり続け、その結果、20代でトラックドライバーになろうという人は激減。さらに追い打ちをかけるように、2007年の道交法改正によって、これまで普通免許で最大積載量5トン未満のトラックを運転できたのが、3トン未満に変更。これにより、高卒新人の即戦力人材の獲得が難しくなり、ますます若年層のトラック業界への就業離れに拍車がかかることとなりました。

 若手の空洞化が進み、現在、ドライバーの約7割が40代以上で、高齢化は加速しています。全事業者の5割以上が従業員10人以下、6割が車両10台以下という多くの零細事業者がひしめく競争の激しい市場で、6割以上の会社が営業赤字に苦しみ、7割が慢性的な人手不足という現状。

 運送会社では、自社でドライバー育成に力を注ぐほか、一旦獲得したドライバーにそっぽを向かれないよう、積み荷を一度に運べるカーゴ式に切り替えたり、スワップボディ車(車両本体と荷台が脱着可)を導入したり、ドライバーの嫌がる作業を軽減して“現場”をカイゼン。
 国も、「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」(2016年)を公表して、ドライバー不足が社会的インフラの足かせとなることへの危機感を募らせ、3Kといわれるネガティブイメージからの脱却を図るべく抜本的な対策を急いでいます。

 日本の消費経済の根幹を陰から支えるトラック物流の危機、ドライバー不足。日本だけでなく、欧米各国でも深刻化している“社会問題”です。そしてそれが、単純な少子高齢化が原因でないことが判明したいま。私たちの普段の便利な暮らしが、厳しい環境下のトラック物流で下支えされているということを、改めて痛感せずにはいられません。

※参考:
全日本トラック協会    http://www.jta.or.jp/
国土交通省        https://www.mlit.go.jp/
日経МJ(2015年12月11日付/2016年2月12日付/同2月26日付/同3月4日付)