睡眠の大切さに目覚めました。量より質をカタチにする「睡眠ビジネス」
日本人の睡眠不足ぶりは世界でも有名で、先進国中、常に最下位あたりをウロウロ。寝不足が続くと知らぬ間に眠りの借金“睡眠負債”が蓄積して、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病、集中力や記憶力の低下、うつ病、認知症にかかりやすくなるといったことが指摘されています。回復するには、不足した分の何倍もの睡眠時間が必要となり、とても週末の寝だめぐらいでは“負債”が返済できないほどの高金利。
私たちも、睡眠は時間ではなく質が大切だということに最近やっと目覚めたようで、睡眠ビジネス市場がにわかに活気づいてきました。
着るだけで安眠へと導く効果があると注目されているのが、「リカバリーウエア」です。血流促進効果があるナノプラチナを練り込んだ特殊繊維を開発し、休養時専用ウエアとして2009年から発売している[ベネクス]を皮切りに、2010年に[アンダーアーマー]、2013年には[プーマ]、翌年に[ナイキ]、16年に[ゴールドウィン]、昨年には[ライザップ]も参入して市場はにぎわいを増しています。決して安いとはいえない価格にもかかわらず、各社売り上げは右肩上がりの好調ぶりです。
寝具メーカーの老舗[西川産業]の直営店「日本橋西川」では昨年、[パナソニック]とのコラボで睡眠環境のトータルリフォームを提案するショールームをオープン。就寝から睡眠中、起床までの温度、湿度、照明、空調、音響、香りなど、寝室全体をスマホのアプリ(おやすみナビ)によって理想的な状態にコーディネート。
睡眠関連の書籍の中で昨年ベストセラーとなったのが、『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)。睡眠医学の権威、スタンフォード大学の西野精治教授(著者)によると、良質な睡眠は、眠り始めの90分で決まるといいます。眠りの入口でつまずいてしまうと、どれだけ長時間寝ても自律神経が乱れ、なんかスッキリしない、という状態を抱えてしまうことになります。
寝不足が日常化している人は太りやすいといわれます。眠りが足りないと、食べ過ぎを抑えるレプチンというホルモンが分泌されにくくなるばかりか、食欲を増すグレリンというホルモンが出るために太る、という悪循環を招きます。
仕事や家事、遊びなどで、つい睡眠時間を削ってしまいがちになりますが、睡眠は決して“どうでもいいもの”ではなく、人間の体は眠っている間にとても大事な仕事をしているのです。くれぐれも、ナポレオンは一日3時間しか眠らなかった、などという伝説を実践しませんように—–。
※参考:
ベネクス http://www.venex-j.co.jp/
西川産業 http://www.nishikawasangyo.co.jp/
サンマーク出版 https://www.sunmark.co.jp/
日経MJ(2017年10月16日付)