訪日客にとって夜の観光の乏しさは、観光立国、日本の弱点です。

昨年、日本を訪れた外国人観光客の数は約2870万人となり、5年連続で過去最高を更新しました(国交省)。同時に消費額も4兆円の大台を突破して過去最高を更新(観光庁)。ところが、訪日客一人当たりの消費額となると、1.3%減の約15万4000円と伸び悩み、ピーク時(2015年)より2割ほど落ち込んでいます(観光庁)。20年に、一人20万円(トータルで8兆円)を目指す政府目標の達成に黄信号がともっています。訪日客がそこで打開策として浮上したのが、“娯楽”への支出増を促そうという動き。ことに、“夜の娯楽”に特化させた市場活性化策です。そもそも、訪日客が日本で娯楽に使うお金は、消費額全体のわずか1%にとどまっており(観光庁)、欧米では10%を超える国があることを考えると、なんとも物足りない数字といえます。“ナイトタイムエコノミー”を日本経済の新たな起爆剤とすべく、官民、タッグを組んで立ち上がっています。

歌舞伎をアレンジしたショーと殺陣の「歌舞伎ディナーショー」、和太鼓や日本舞踊のステージ、沖縄県では英語と中国語の解説付きの伝統芸能ショー、ロボットやダンサーによる華やかなショーが楽しめる「ロボットレストラン」、新宿のディープな飲み屋横丁「ゴールデン街」探訪、京都では老舗ディスコの「マハラジャ祇園」が復活して訪日客のクラブナイトに一役買います。

また、[JTB西日本]では、大阪のミナミエリアの複数のナイトクラブを3日間自由に入退場できるパス、「OSAKA NIGHTCLUB PASS」を発売。

残念なことに、外国人観光客の間では「日本では夜に遊べる場所が少ない」というのが定説で、夕食後は時間をもてあまし気味。結局、24時間営業の量販店に訪日客があふれる、という事態に。

ナイトレジャー市場の潜在ニーズは大きく、夜にお金を落とすことをいとわない訪日客の“機会ロス”を、みすみす指をくわえて見過ごしている手はないはずです。自民党は昨春、「ナイトタイムエコノミー推進議員連盟」を発足。また、五輪開催を控えた東京都も、この観点からニーズや課題を探ろうと今年度に初の調査を行います(予算5000万円)。観光庁も今年度に夜間観光に関する調査を検討。関連予算として1億2000万円を盛り込みました。

訪日客はいまや、個人リピーター客の“コト消費”へとシフトしています。2020年に4000万人の訪日客を目標に掲げる政府にとって、ナイトエコノミーの創出こそが喫緊の課題。夜のコト消費先の受け皿づくりの充実を図って、眠っていた夜を新たなゴールデンタイムにしたいもの。いずれにせよ、訪日客を夜、ホテルに引き込もらせてはもったいない、ということです。

※参考:

国土交通省         https://www.mlit.go.jp/
観光庁           https://www.mlit.go.jp/kankocho/
JTB西日本          https://www.jtbwest.jp/
日本経済新聞(2017年8月23日付/同9月25日付/同11月29日付)
朝日新聞(2017年9月5日付)
毎日新聞(2018年1月13日付/
同1月17日付/同1月25日付)