酒離れ世代を酔わせることができるか、「注ぐだけカクテル」。
チンするだけのお惣菜、一回つけるだけのクリーム、スイッチを入れるだけの調理家電、聞くだけでマスターできる英会話グッズ……“〇〇するだけ”のオールインワン商品が大流行の今日この頃。もはやこの“ラクチン+ハイクオリティ”を求めるトレンドは暮らしの至るところにまで浸透し、一つの消費スタイルにまでなっているといえます。
アルコールドリンクの世界でも、3年ほど前にアメリカから上陸した「RTS=Ready To Serve」という新しいお酒の飲み方が、徐々に日本に根付き、新たな市場を創造しつつ堅調な伸びを示しています。
「RTS」とは、キャップを開けてそのまま氷を入れたグラスに注ぐだけで飲めるカクテル風リキュールのこと(アルコール度数10~20%)。最適な味に調整されているので、ソーダなどの割り材や果汁などを使わずに、手軽にしかも本格的な味わいのカクテルが楽しめるというメリットが。安価に抑え、若者や女性ウケする、ほんのり甘めでフルーティーな飲み心地、カラフルな色合い、オシャレなボトルデザインなどで、“酒離れ”といわれる20~30代の男女を取り込もうと、メーカー各社は商品開発や販促に力を入れます。
中でも一歩抜きん出ているのが[サントリー]。焼酎RTSの「ふんわり鏡月シリーズ」は、アセロラ、ゆず、梅、しそレモンに今年、ライチ、ヨーグルト風味を加えて全6種に。また、果実酒RTSとしては「澄みわたるシリーズ」を展開。梅酒、葡萄酒、ゆず酒に白桃酒が加わって全4種。他にも、果実をマイナス196度で急速凍結する新技術を採用した「-196℃ロックスタイルシリーズ」には、グレープなど3種類のフレーバー。さらに今春には、宇治抹茶に玉露を加えた「抹茶プレッソ」というRTSを発売しました。
[サッポロ]からは、梅酒RTS「ウメカクシリーズ」。ピンクグレープフルーツと白桃の2種で対抗します。[アサヒ]は、焼酎RTS「季節香るかのかシリーズ」で、“大人のカシス”と“和みのゆず”“太陽のライチ”の3種を発売中。[キリン]からは、今春「キリン杏露酒 ひんやりあんず」を発売。凍らせた国産あんずをお酒に漬け込んでできる浸漬酒を使用しています。
本格的なお酒を好むユーザーから、若者や女性といったアルコールビギナークラスまで、幅広い層からの支持を集める「RTS」。新しい飲料文化として浸透度を増し、スピリッツ・リキュール市場の起爆剤となることに、大きな期待が寄せられています。
※参考:
サントリースピリッツ http://www.suntory.co.jp/
サッポロビール http://www.sapporobeer.jp/
アサヒビール http://www.asahibeer.co.jp/
キリンビール http://www.kirin.co.jp/
日経産業新聞(2016年1月18日付)