階段の上がり下り解消。木造2階建て住宅にも「エレベーター」。

一般的に、3、4階建て高級住宅の豪華設備といったイメージが根強かった「ホームエレベーター」(以下、HE)ですが、最近、2階建て用のコンパクトなHE(2~3人乗り)が登場。

急速に普及しつつあり、“高嶺の花”から、ぐっと身近な存在になってきました。

国内HE市場で圧倒的トップの[パナソニック]は、昨年、リフォーム対応の2階建て専用2人乗りHE「1608ジョイモダンS200V」(油圧式)を発売しました。

エレベーターのルーム内寸法は、幅115×奥行60×高さ200cmと横長の省スペース設計で、わずか1畳分(182×91cm)の空間があれば設置できるというのが売り。押入れや不用になった収納スペースなどを有効活用できます。

従来、HEを設置する際には、最下階床下寸法(ピット寸法)として約55cmが必要ですが、一般的家屋は45cm程度しかなく、床下の基礎部分をさらに掘り下げる地盤改修工事が必須となります。

この点が、HE設置を希望する多くの人を躊躇させる要因ともなっていました。そこで「ジョイモダン」は、油圧ユニットを小型化し、さらに横面配置(従来は底面)できるように改良することでピット寸法を業界最小クラスの20cmにまで低減。

その結果、工期を約3日短縮でき、これに伴う基礎工事費も約25%カットすることを可能にしました。

本体価格は、鉄骨・コンクリート住宅で285万円(税別/工事費込み)、木造住宅で295万円(同)。使用電気代は、一日20回の使用で月額440円。定期点検等のメンテナンス契約は、月3500円~(税別)。

パナソニックとシェアを分け合っているのが[三菱日立ホームエレベーター]です。個人住宅用に2~3人乗り・2~4階建て用の「スイ~とホーム」シリーズを展開。最近は、2階建て用の需要が急伸しています。

扉が開くだけで別のフロアになる—-タテの動線が平屋感覚で移行できるという、バリアフリーならぬ“フロアフリー”を実現してくれるHE。お年寄りにありがちな自宅での階段事故の心配もなく、60代以上を中心に、ここ5年ほどで需要は明らかに高まっています。

500万円以上だった価格も、高齢化社会の進展と3、4階建て住宅の増加などを背景にダウン傾向に。毎日使うものなので決して高い買い物ではない、と消費者側の意識も変化。“贅沢品”扱いからの脱却こそが、この市場の押し上げにつながります。

※参考:

パナソニックホームエレベーター http://sumai.panasonic.jp/elevator/
三菱日立ホームエレベーター   http://www.mh-he.co.jp/

日経МJ(2016年7月15日付)