高品質・単機能・低価格。新風巻き起こす「ジェネリック家電」。

 「ジェネリック医薬品」にあやかって命名された「ジェネリック家電」。Generic=「一般的な、総称的な」という意味の通り、ブランドにこだわらない低価格で高品質な家電の総称で、業界内でめきめきと存在感を増し、今では売り場を席巻するほどの勢いです。

 近年特に、大手メーカーの商品開発サイクルが早くなり、次から次へと新しい機能を備えた新製品が市場に送り込まれます。そのため、そこで使用された技術や部品はまだ十分に使えるものでもちょっと古くなっただけで価値が下がってしまいます。ジェネリック家電メーカーは、特許を侵害しない形でそれらを安価で買い取って製品化。研究開発費がかからず、莫大な広告費もかけないため、リーズナブルな価格での提供を実現。さらに、搭載する機能を絞ってシンプルな設計にしている点も低価格実現に貢献しています。大手家電製品が、ややもすれば機能過剰になりがちなのに対し、ジェネリック家電は不要な高機能をそぎ落として、“シンプルで使いやすく”が売り。例えば扇風機。強・中・弱の切り替えと首振り、タイマー、高さの伸縮といった基本性能のみで2,000円前後。リモコンや静音機能、チャイルドロックなどは、割り切って搭載していません。

 ジェネリック家電のメーカーは、もともと大手の下請けをしていたところが多く、部品や製造技術に精通しているばかりか、最近では転職や早期退職などによる大手メーカー出身の技術者を積極的に採用。品質は、独自の安全基準を設定し、耐久テストも万全。素材も環境基準を満たし、消費電力にも気を配ります。なにしろ、大手メーカーと同じ部品と技術を使うわけですから、製品的になんら遜色のない高品質の優良家電といえます。“安かろう、悪かろう”の粗悪なB級品とは一線を画しています。

 ジェネリック家電メーカーの大手といわれているのが、[山善](大阪)、[ツインバード工業](新潟)、[オリオン電機](福井)、[アイリスオーヤマ](仙台)、[船井電機](大阪)。他にも、[トヨトミ][テクノス][CCP][ユピテル]など多数。また一方で、家電量販店大手の[ノジマ]のように、「エルソニック」というPB家電の開発・販売に力を入れ始め、ジェネリック家電と真っ向から競合するという動きも見られます。

 ジェネリック家電の登場は、大手から販売される最先端の高機能新製品が、以前より早い段階で値下げになるという、皮肉で複雑な現象をもたらしているようです。

※参考:
山善          http://www.yamazen.co.jp/
ツインバード工業  https://www.twinbird.jp/
オリオン電機     http://www.orion-electric.co.jp/
アイリスオーヤマ  http://www.irisohyama.co.jp/
船井電機       http://www.funai.jp/
ノジマ         http://www.nojima.co.jp/
日経産業新聞(2015年8月20日・21日付)